彼女 と 嫌な予感〜1 ページ7
嫌な予感は的中した。
その知らせを聞いた彼女はひとらんらんの背中から飛び降りると一目散に走る。
予測して構えていたゾムたちも捕らえられない程の、狂犬のごとき疾走だった。
そしてAはそのまま会議室の扉を開き、吠える。
『ユリが倒れたってどういうことだ!!』
ﾋﾞﾘﾋﾞﾘと空気が震えるのが肌でわかるほどの怒りだった。
「【必要悪】、落ち着いてください!」
一人の軍の指揮官が宥める。
しかし、それは火に油だった。
ただ単に命令されただけのAは、静かに燃え続ける。
『状況を』
「わからないのです!……」
『治療中だろ?なんで軍病院にいるのに倒れている?』
「それは……ｯ」
言葉を濁らせた彼に威圧という名の刃をかけるA。
それは蛇のように、ギチギチと絞め上げる。
本当に絞められていたのか、彼は息を詰まらせて気を失った。
すぐさま別の指揮官が気を反らすように答える。先程の若い指揮官より十ほど年上の男だった。
そして騒ぎを聞き付けてか、何人か大和軍の兵がやってくるのが足音でわかる。
「大和軍出身であるため、もしものために備え、幽閉をしていました」
『』
「ただ部屋の外に出ないというだけです!他の入院者が安心するようにという処置で」
それ以上の言葉はいらなかった。
Aはｶﾞﾝｯとそのドーナツ型テーブルに両足をのせる。犬の様な体制。黒い山羊の蹄のようなものがズボンから覗く。
無意識なんかではない。そこにいる無能でニンゲン以下、もはや供物と言えるソレを喰い破ろうという明確な意思を持ったAは歯を噛み削り、足を動か＿＿
「やめて、A」
ｶﾞｼﾘとフードをつかんだのはマフラーの男だった。
この状況でのそれは、端からみたら自さつ行為だろう。
しかしそれにAは犬のように従順に従った。
ﾋﾋﾞの入ったテーブルから飛び降りる。
『……はぁ……私が悪かったよ』
Aは横にいる人物を見た。
意外と足早いじゃねぇか。
【兄さん】
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作者名：べっこう飴エ | 作成日時：2017年9月3日 18時
