彼女 と 蜘蛛の使い〜2 ページ5
「最後に一つ、質問してもいいでしょうか?」
その言葉にAは頷く。
元々彼らに被害が出ていたから動いた仕事だ。解決するなら用は無いし。
つまり気分も機嫌も向上していた彼女は、いくらか明るいトーンで返す。
『いいよ。なんでも答えてあげる』
「今、幸せですか?」
答えることはできなかった。
****
彼らが目を覚ます頃、辺りはもう明るくなっていた。
ゆっくりと目を開いたグルッペン。
その目に、一つの光景が焼き付く。
岩の上に座るA。
日射しを受け、風を浴びてコウコウと揺らめく姿。
さながら暗闇に灯る一つの蝋燭。
それほどの存在感が、彼女にあった。
絶句するグルッペンに、Aは振り返って一言。
『おはよう。任務達成だね』
そう言って背景の太陽のように笑った。
***
川でばしゃばしゃと顔を洗う彼ら。
その体からは猫耳も尻尾も消えていた。
『……』
ショックな気持ちを隠せないA。
え〜……もうちょっとにゃんこでも良かったかもな〜〜……
頭の中で昨日のことを振り返りながらそんなことを考えていた。
そうしている内に、顔を洗い終わった大先生がAに言った。
手で猫耳のあった場所をしきりに撫でている。気になるんだね……。
「なんでなくなったんやろ」
『ｻｲｺﾊﾟｽ軍が来たからヤッベってなって呪いといたんじゃない?』
「あ〜〜……否定できない」
苦笑して大先生は顔を拭いた。
それに対し、Aは気にすんな。と一言笑った。
彼女なりの気遣いである。
『ま、いいんじゃないの?今日半分が軍に帰るとこだったしさ。朝飯食って帰んべ』
「はーい」
間の伸びた返事が返る。
Aはそれを噛み締めながら、片手で朝食のおにぎりを……
『あれ?おむすびないんだけど』
ｼﾞｯとある三人を見つめるA。
……ﾃﾍ。ﾒﾝｺﾞ。
そんな雰囲気が伝わってきた。
『全部食ったの!?このお馬鹿さんが!!』
彼らには内緒だが一徹夜のAはまぢで元気モリモリではない。
今の彼女はツッコミ精神のおかげで動いていると言っても過言ではない。
朝食は元気の源。
『朝食なくてチョーショック……』
「え」
「は」
「……」
『すいませんでした』(すいませんでした)
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作者名：べっこう飴エ | 作成日時：2017年9月3日 18時
