甘え薬 と 彼〜4 ページ33
主目線
「おやすみ」
『うん。おやすみ』
グルッペンは耳元でﾎﾞｿﾘと呟く。そしてその数秒後には寝息をたてていた。
やっぱり疲れてたんだね。
いつもお疲れ様だわ。
そんな思いを込めて頭をﾎﾟﾝﾎﾟﾝと数回撫でる。
セットされていた髪を少しくしゃくしゃにして彼は子供のように眠っていた。……君の寝顔とか数日振りだね!最近よく見るね!いいことだ!!
緩くなってきた手からそっと抜け出してベッドの端に座る。頭を撫でる手は止めないままに私は扉の方に声をかけた。
『仕事の用事かな?』
「そうやけど。……お取り込み中だったようですまんな」
『DTには刺激が強いかな!?』
「んだとこいつ!!てかﾃﾞｨｰﾃｨｰって言い方じゃﾊﾟｯと聞きわからんで!」
静かに扉を開けて入ってきたのはトントンだった。
彼は五センチほどの書類の束を側にある机に置き、ハァとため息をつく。
『今ここで幸せ逃げたね』とか言ったら「お前のせいや」とか言われそう。
『幸せ逃げたね』
「お前のせいや」
おぉう。
驚いた。
「……ええな〜」
『何がよ』
私が感心していたら、トントンが不満そうな顔でベッドに座った。ｷﾞｼﾘとベッドがきしむ。
不満ってか不機嫌かな、この顔は。声色もいつもより低い。
返事を待つまでの間、私はグルちゃんの頭をポンポンしていた。
数秒後、トントンはグルッぺンを燃えるような目で見て言う。
「グルさん羨ましいわ。Aに甘えられて」
『ん?』
「なぁA、俺は…俺は可愛がってくれんの?」
甘えるような声と共にﾊﾞｯと腕をつかまれた。自分の手より一回りも大きい軍人の手だ。力強い手。しかし、そのつかまれ方はとても繊細なものだった。
さらにトントンは私を立たせるように引っ張りあげると隣の壁に押し付ける。
三十センチ差は酷いもので、私の首はおれそうだった。
熱を持った彼の瞳がｼﾞｯと私を焦がす。
『知っているかトンちゃん』
「なんや」
『壁ドンをリアルで喜ぶ女性って二十%くらいなんだってよ、好きな人にするときは気をつけてね!』
「今言わなくていいことちゃう!?お前本当フラグへし折るの好きやな!!」
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作者名：べっこう飴エ | 作成日時：2017年9月3日 18時
