妹たち と 姉だったモノ〜4 ページ26
ｼﾞｭｯとユリの足下の地面が黒く変色し、溶けた。それでも彼女は、Aから目を離さない。
Aは子供のような顔をした。なんでそんな顔で私を見るの、と叫んでいた。
『違う違う違う!!ユリは悪くないｯ、ユリは、みんな悪くないっ』
「ずっと、我慢してきたんですね。演技を続けてきたのは、貴方なんですね」
『煩い煩い煩い煩い!!そんな綺麗事を、でまかせを、口から吐くなっ!知ったようなことを、言うなｯ!!』
「わかりますよ、だって、」
【貴方の妹ですから】
『……ｯ』
「掌を回しすぎだと貴方は嘲笑い、話を聞いていないかもしれません。でも、ひとつだけ……
もう、いいんですよ?」
それはただの偶然だったのかもしれない。
だが、ﾊｯとAは顔をあげた。
その二色の瞳からは絶えず涙が溢れていたが、その表情はとても美しく、澄みわたるようなものだった。
まるで荒れ地に水を撒いたような。
安心する一歩前の子供のような顔をしてAはユリを凝視する。
ユリは微笑んだ。
そして、もう一度言い聞かせるように言った。
『ｯ…あっ……ｳｩ……ｯﾋｯｸ……』
それを聞いたAの涙は止まらない。
拭っても拭っても、ソレはあふれてくる。
【許し】
それは、彼女の首に巻き付いた鎖をほどく鍵だった。
楽しくなかったわけない。
嬉しくなかったわけない。
それでも演技を続ける彼女は、今、確かに鎖を一つ千切られた。
今日。太陽の輝く緑のもと。
ひとつの神が救われたような気がした。
(ただし、神が解放されたなんて言っていない。
神が救われたなんて言っていない。
神が幸せだなんて言っていない。)
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作者名：べっこう飴エ | 作成日時：2017年9月3日 18時
