八十八、ツイてる?ツイてない? ページ15
「クッソタレがぁ!!」
苦し紛れを掴みナイフでAに襲い掛かる。
避けるつもりだったが、足が縺れて倒れた。
「ッ!」
油断した。
潤一郎の叫び声を無視した。答える暇はない。
チャンスだとばかりに振りかざすナイフをギリギリで避け、素早く立ち上がる。
向かってくる攻撃をひらりとかわし、男の腹部に右足をめり込ませた。
*
「Aちゃん!服どうしたの!?」
「んあ?」
汗を手の甲で拭い、見てみる。
ざっくり肩から右腹にかけて切れていた。
しっかりAの胸をカバーしていた下着が見えている。
幸い怪我はない。
「あぁ・・・」
溜息を吐き「着替え持ってきてないよ」と言ってそのままブラウスを脱ぎ始める。
「ちょッ、一寸!!」
慌てて後ろを向く。
「あッごめん。後ろ向いてて」
「言うのが遅いよ!
・・・何で着替え持ってないのに脱ぐのさ」
「いやだって、みっともないじゃん。邪魔だし」
だからって異性がいるこの場所で脱ぐ?
と言うか下着姿はみっともないのかという疑問がグルグルする。
「潤一郎君悪いんだけど、私に細雪を掛けてくれない?」
それで、服を着ているように見せるわけか。
もう呆れて溜息が出てくる。
何時も腰に巻き付けているパーカーを解き、Aに差し出す。
「ほら、これ着て」
「ありがとう」
前にも同じようなことがあった気がする。
「こうしてると潤一郎君に包まれたみたいだね」
羽織り、袖を嗅ぐA。
瞬間グンッと熱が上がった。何かに刺さり、クるものがあった。
もう、嫌・・・。
*
「今日はツイてない!」
きっと先程の事件を主に言っている筈なのに、グザグザとくる。
「どうしたの?」
「別に・・・」
パーカーのチャックを上まで閉めてないので、偶に下着が見える。
もっとしっかり閉めて欲しい。
「あっ大根は綺麗に洗って加熱して美味しく頂く予定だから心配しないでね!」
そうじゃないンだよなぁ・・。
チラリと時計を見る。もう少しで日付が変わる。
これでラッキースケベともおさらばだ。
「ねぇ、潤一郎君」
ピタッと急に足を止め、こっちを向く。
控え目に潤一郎の袖を引っ張る。
「今日は帰りたくないな」
「えッ」
数秒の静寂。車さえも通らなかった。
・・・カチリ。
全ての針が重なった。
「・・・なんてね。同じ寮に住んでいるのにね。
早く帰ろっか」
フフッと普段通りに笑って前を向き、歩き出す。
暫く足が動かなかった。
跳ね上がるような締め付けられるような変な感じがした。
「Aちゃん、帰りたくないなんて簡単に言っちゃダメだよ!」
急いで隣に並ぶ。
「言わないよ」
月を背景に微かに微笑んだ.
バンド 場を支配する奏者【プロデューサー】→←八十七、仕事が終わったら帰りたい
72人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
麗(プロフ) - 24ページ 空気を纏う祖母に とありますが話の流れ敵には 祖父 ではないでしょうか? (2021年4月23日 14時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
柚湯(プロフ) - ドットコムさん» おめでとうございます。今年ものっぺり更新ですがよろしくお願いします。 (2019年1月2日 16時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム(プロフ) - あけましておめでとうございます!今年も夢主可愛いですね! (2019年1月2日 8時) (レス) id: e6a479853a (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム(プロフ) - 柚湯さん» 乗り物って自転車以外酔っちゃいますw。コーヒーカップとかヤバイです。 (2018年10月20日 22時) (レス) id: e6a479853a (このIDを非表示/違反報告)
柚湯(プロフ) - ドットコムさん» 私も運転が激しいのは・・・。吐きますね。 (2018年10月20日 22時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柚湯 | 作成日時:2018年3月26日 23時