【文豪ストレイドッグス】女性博愛主義の彼女

ホワイトデー ページ44

「にも意味があって・・」
今日はホワイトデー。バレンタインで貰ったチョコのお返しをする日でもある。
よく世の女子達が「ホワイトデーは三倍返し！」と言っている位なのだから、粗末には出来ない日だ。
向こうでは、仲良さそうにナオミとAちゃんが話している。
断片的に聞こえる声は本当に楽しそうだ。
頬が緩みそうになるが、此れからの予定を彼女に聞くのは、結構勇気がいる。
付き合っているのだから、気軽に言えばいいと思って、ずるずる引きずっていたら時間があっと言う間に過ぎてしまった。
実行する時までが、凄く緊張する。やってみれば簡単な事なのに。
告白も言う前が一番怖い、言ってしまえば如何とでもなるのに。
「潤一郎君如何したんだい？そんなに思い詰めて」
「おわっ、Aちゃん！」
いつの間にか、Aちゃんが近くに居た。
手には湯気が立つカップが握られている。
「君は、紅茶好きだよね」
「まぁね」
フッと息を吐いて、ゆっくり啜る。
「ねぇ、この後、あっ空いてる？」
「勿論、何処かへ連れって言ってくれるの？」
この笑顔で、緊張も緩み、温かい何かが身体を包んだ。

＊

「おぉ、科学の力って凄い！」
電球と思えない、星屑のように輝くこの場所は幻想的で、思わずうっとりする。
Aちゃんも目を輝かせてはしゃいでいる。
「昼間とは、違う景色を見せるンだって。昼も来れたらよかったね」
「私は、真っ暗な夜で光る今が好きだなぁ。少し寒いのも好きだし」
ゆっくり歩き出す。写真は撮ろうとしない。
「Aちゃん！」
足を止めて、此方を振り向く。
「此れ、バレンタインのお返し」
取り出した、包みを彼女に渡す。
「嬉しい。開けてもいい？」
頷くと、丁寧に梱包された包装紙を剝がしていく。
蓋を開けると、一瞬固まった。
「ねぇ、潤君」
何時もより、落ち着いた言葉が怖い。
「私と居て楽しい？大変じゃない？」
何故今そんな事を聞くのだろうか。
はっ待てよ、前ナオミに付き合わさせて見たドラマのワンシーンで似たような事があったような。
簡単なすれ違いで始まった女の勘違いで別れようとしたヤツ。
「っ一寸待って、早まらないで。ボクはAちゃんの事好きだし、ずっと一緒に居たい！」
驚き目を見開いたが、直ぐに微笑み、
「ヘタレの癖に・・・」
口にクッキーを放り投げ、少し赤みを帯びた顔で言った。
「大好きよ。潤君のばーか」
赤い顔を隠すように、さっさと歩き始めてしまった。
ボクも君がとっても大好きだよ。

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