51話 ページ16
先程よりも明るくなり、出発の刻が近づいてきた
シカクに皆を起こすことを頼み、私はまた水を汲みに近くの川へと向かう
『これで全員分』
汲み終えた竹水筒を抱え戻ろうと歩きだした時
来た道から足音が聞こえてきた
「―――おはよう、A」
『……おはよう、ミナト』
木の陰から出てきたのはミナトだった
『水なら汲み終えたよ』
ほら、と竹水筒を渡すとありがとうと返ってきた
「皆のも持つよ、結構な数だから重いだろう?」
少しの距離だが、確かに9人分の水入り竹水筒は重たい
『……大丈…』
″〈いきなり仲良かったやつに避けられ続けて、素っ気ない態度とられ続けて、平気でいられるやつなんかそういねぇよ〉″
今朝方シカクに言われたことを思い出し言いとどまる
すぐにミナトから離れるための行動をとることが癖になり始めていた自分に衝撃を受けた
私の態度から断られると思っているのか、ミナトは少し眉を下げ伏目がちになっていた
ぼーっと固まっていた私を心配し、顔をあげたミナトを見て目を見開く
『(ミナトって、こんな雰囲気だったっけ…?)』
久しぶりにしっかり見るミナトは、いつものような優しい雰囲気と澄んだ青碧の奥に感じる強さはなく、弱々しいものに変わっていた
「…A?」
不安そうな、おそるおそると言った表情を見て私は自分の愚行にようやく気付いた
『(最低だ…)』
シカクの言った通りだ
今まで散々接してきといて、いきなりさよならなんて勝手
仲の良い相手にされたら傷つくに決まってる
ミナトに、クシナに、イロハに、同じことされたら立ち直れないぐらい悲しい
一日二日そこらの関係なんかじゃないんだから
ミナトはクシナと幸せになる…?
だからどうしたんだ
私がこの想いに苦しむことなんかより、ミナトを傷つけ苦しめることの方がずっと痛い
『ミナト…』
「ん?どうしたの」
これから私は、きっと耐え切れないぐらい苦しくなることもあるだろう
私の想いはいつの間にかこんなにも大きくなっていたから
『…半分、持ってほしい』
「…!」
―――それでも、
どうでもいいことでイロハと私が口喧嘩して
何故かクシナが参戦してきて
喚く3人を苦笑いしながらミナトが宥める
そんな今が、これからもずっと続いていけば…
『ごめんなさい、ミナト』
「ん、できればお礼の方が嬉しいな」
隣でなくとも、この笑顔を見続けられるのならば
私は、この世界に生まれて
幸せだったと言えるのだろう
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あまね(プロフ) - コメントありがとうございます。サボり管理人故にお待たせしてしまうことでしょうが、寛大な心で更新お待ち頂けると幸いです (2018年7月1日 1時) (レス) id: 1de2d0bb0d (このIDを非表示/違反報告)
みーさ - とても面白いです! これからも頑張ってください!! (2018年6月30日 17時) (レス) id: c6295103af (このIDを非表示/違反報告)
しろくま - お久しぶりです。そろそろ続きを頂けないかなぁ〜。なんて思っての書き込みです。(スミマセン) (2018年2月11日 2時) (レス) id: 2cd02ea97c (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 百合の花さん» コメントありがとうございます(^^)馴れ馴れしいなんてとんでもない。更新楽しみにしてくださってる方からのコメント、嬉しい限りです!他の人より更新は遅いですが完結まで是非お付き合いください(_ _) (2017年12月18日 21時) (レス) id: 09c16cdf37 (このIDを非表示/違反報告)
百合の花 - お帰りなさいです!初めてコメントするのに馴れ馴れしかったらごめんなさい。いつも楽しみにして読んでたので更新されて嬉しいです!いつも応援しています!頑張ってください! (2017年12月15日 23時) (レス) id: b8bc411ea9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまね | 作成日時:2017年5月5日 17時