甘く、沈む。《ars/k.n,s.s》 (ページ45)

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ほとぼりがページ45

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二宮さんがわざとらしくため息をついてキッチンへと行ってしまう。

その背中を追いかけて電気ケトルに水を入れてる二宮さんにさらに言いつのる。

「いつまでもお世話になってるわけにもいかないですし」

「それは気にすんなって言ってんでしょ。つか、またあいつに会ったらどうするつもりだよ」

機嫌悪そうに細められた二宮さんの視線が私を射抜く。

智さんの悲しそうな顔を思い出して、私は言葉に詰まった。

「……それは」

「ほらな。ほとぼりが冷めるまで引きこもってろ」

「なんか私すごい罪犯したみたいじゃないですか」

肩を落とした私の頭に手を置いて、ぽんぽんと優しく二宮さんが撫でる。

「それでごまかされると思ったら大間違いですから」

「あら残念」

やっぱり残念そうには見えない二宮さんは喉で笑いながら「ココアのむ？」といつもの調子で言った。

「のむ」

とつい私もつられるようにいつも通り答えてからしまったと思ったけどもう遅い。

勝ち誇ったように笑みを浮かべた二宮さんが恭しくダイニングの椅子を引いた。

「こちらへどうぞ、お姫様」

「ちがう、撤回、撤回します！」

「却下」

電気ケトルが二宮さんの味方をするみたいにカチリと沸騰の合図を鳴らした。

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