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第7話 「幸福な食卓」 ページ8

一「二郎がテストで世話になったな」

Aはフリーズした。

僕「え?えっと?」

一「隠す必要はねぇぜ。二郎の奴、再テストだってことも忘れて、自慢しに来たからな。事情は知ってる」

僕「二郎……(怒)」

隠せと言った本人が、嬉々としてバラすな。

僕「……二郎のこと、怒ってます?」

一「学校そっちのけで依頼を優先したことは言わせてもらったが……。それも家族のことを思っての事だし、何よりあのテストの結果見ちゃ、怒るに怒れなかったな」

一郎さんの表情は柔らかくて、なんというか。

僕「何だか、嬉しそうですね……?」

すると一郎は「分かるか」と言って、恥ずかしそうに頬を掻いた。

一「最近の三郎は友達に対してあまり良い印象を持っていないし、二郎はどっちかと言うと不良仲間との付き合いが多いからな。気を使ってか、自分から話すことは無かったんだ。だから、こうやって弟の友達と話せるのが嬉しくてな」


二郎が兄を慕っている理由が分かった気がする。


一「そこでなんだが……。お礼も含めて今日の夕飯、うちに食べに来ないか?」

一郎の買い物袋から大根が頭を出してゆれた。


◆◆◆


〈山田宅〉

一「いただきます!」

二「いっただきまーす!」

三「いただきます」

僕「ん〜???」

僕は一体何をしてるんだ?

二「A、食べねぇと冷めちまうぞ」

僕「あ、うん……いただきます?」

一「どうぞ」

いただきますに言葉が返る。忘れていた感覚に心がもどかしくなった。

僕「……美味しい」

大根と長ネギの味噌汁。口に含ませた途端、声が出た。

僕「__美味しいです」

キラキラキラ。

三兄弟は思わずと言った風に吹き出した。

二「Aっ、お前今、すげぇアホ面……」

僕「うそぉっ!?」

三「ぷくくっ……」

僕「三郎君まで!?」

ショックを受ける中、頭に大きな手が置かれた。

一「ハハッ、嬉しいぜ。そう言って貰えると!」

わっ……。

三「Aさん大丈夫ですか?顔が真っ赤ですよ」

二「此奴、不意をつかれるとこうなるんだよなー」

二郎が頬をつつく。

僕「やーめーろー」

一「悪い!つい、いつもの癖で……」

手が離れる。ほっとしたような、もう少しして欲しかったような。

二「ボーっとしてる奴の唐揚げもーらいっ!」

僕「こらっ!返せバカ!!!」


何というか。


三「何してんだ低脳!いち兄、二郎がAさんのおかず取ってます!」

一「二郎〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」





_____幸せだ。

第8話 「未知の君」→←第6話 「犬猿の二人」



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もちごめ(プロフ) - ハァッッッッッ!!めっちゃ好きです速く推しの麻天狼が出て欲しい...((願望 ←因みに推しは夢野幻太郎と独歩...((ボソッ 更新頑張ってください!! (2019年1月26日 14時) (レス) id: a221333f8f (このIDを非表示/違反報告)
サイカ(プロフ) - 初コメです!楽しんで読ませていただきました!とても面白かったです。これからも更新頑張ってください! (2019年1月24日 2時) (レス) id: f0e2e83b11 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水葵 | 作成日時:2019年1月23日 19時

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