ジル ページ3
今日の待ち合わせは午後6時
駅前の本屋の出口。
毎週金曜日は紙袋2つ分。
大量の本を買い込んで出てくる。
「ベストタイミング〜」
僕の計算に間違いはないね。
いつも通りの軽い足取りで駆け寄った。
「だーれだっ」
華奢な両腕からひょいと荷物を取り上げたがその少女は振り返ると同時に僕の顔面に向かって容赦のない拳を振り落とした。
沈む直前の太陽に照らされて揺れた藤色の短い髪と頭の宝石がキラッと輝く。
「やっぱ効くね...ジルのパンチは..」
殴られる瞬間とっさに脱いだカーディガンの上に着地させた本たちを気にしながら僕は頬を抑えた。
ジルは何も言わずにいつも通りの無表情で僕の前に仁王立ちしている。
「ねーごめんって。ね?
ほら本はちゃんと無事だからさ。許してよ。」
「お前はなぜいつも俺の出てくる場所にいるん
だ。待ち伏せはやめろと言ったはずだが?」
ジルはそう言いながら指の関節をボキボキ鳴らした。
その直後に繰り出された二発目を僕はひらりとかわして立ち上がった。
「はいはいごめんごめんもうしないよ〜
それより早く帰ろうよ。
今日は大事な話があるんだ。」
「次やったら今度こそ殺すからなこのチビ野
郎。」
実に自分の40cm上から降り注ぐ「殺す」の言葉にはさすがの僕も言い返す言葉がなかった。
「はいはい。仰せのままに。」
僕は軽く頭を下げると依然不機嫌なジルの手を取って帰路を急いだ。
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作者名:天雛ゆめみ | 作成日時:2019年2月6日 23時