【怠惰な王子と元教育係】瞳の邂逅 ２【無償の………】

52＊距離 ページ8

ル「なんだか変な感じだったわね、Aの通話相手がもう1つの世界の私達なんて」

マ「声もまるで変わらなかったからね」

A風に言ってみれば貴重な体験ではあるのだが、やはり自分自身はここでいて電話などしていないのに、スピーカーから自分の声が聞こえてくるのは妙な感じだった
そして、幹部達はどこの世界でもザンザスの威圧感は健在なのだとの思っているのだった

べ「つかさ、さっきの話からして、もう1つの世界ってのに姫はいないってことかよ」

フ「あぁ、どこかに存在している可能性はあるが、ヴァリアーにはいない、だが、帰ったら探してみるつもりではある」

携帯をしまい、足を組みなおして、頬杖をつく
通話が終わった後のAはどこか機嫌がよさそうで、すこし中身が減ったグラスにワインを注ぐと静かに口に含む

ラ「……………A………」

先程の会話のこともあってか、すこし帰ってからの予定を頭の中で考えていると、心なしか寂しそうな面持ちでラピスがAの隣にやってくる

ラ「直す、終わる、A、すぐ………帰る？」

フ「もとよりそのつもりだ、長々と契約等以外で同じ世界に留まるのはどうも性に合わん
それに………………ここは私の居場所ではない、例えるならば止まり木、一定期間留まることはあってもいつまでも留まる場所ではない」

ラ「……………ラピス………」

フ「こればかりは貴様の願いどおりにはゆかんぞ、私には私の時間がある、そして、私にはやるべきことがある、だからいつまでも同じ場所で立ち止まっているわけにはいかんのだ」

手に持っていたワイングラスをテーブルに置き、すこし冷たい手をラピスの頭に乗せる

フ「貴様の自分のやりたいことを他者に止められるのは嫌だろう？だから貴様も私を止めるな、わかったな」

ラ「……………うん」

どことなく近づいていたように感じていた距離
だが、この時だけはなぜかその距離が一気に開いてしまったような気がし、心地よく感じていたその手の冷たさが、ラピスの中の寂しさをより際立たせるのだった

―――

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