【怠惰な王子と元教育係】瞳の邂逅 ２【無償の………】

83＊幸多からんことを ページ39

フ「ラピス、貴様のような存在は、これからおそらく危険な目に会うこともあるだろう
だが、その中でまっすぐに、悲観せず、堂々と生きてゆけ
貴様は独りではないのだ、家族という存在がいれば、私という同じ異質な存在たる知人もいる」

ラ「うん………」

Aがラピスにかける言葉はいつだって、その人生を案じるものだった
最後の最後も異質だからこそぶつかるであろうつらき壁と向き合うアドバイスをくれた

隣に立つベルの手を握り、これから来る別れを悲しく思ってか、その瞳に透明な涙がたまる
ラピスのその表情に、Aはすこし困ったように肩をすくめ、低く喉を鳴らして笑った

フ「やれやれ、初めて会った時も貴様は泣きそうになっていたが、最後まで泣き顔か？それはあまり面白くない幕引きだぞ」

遠まわしでわかりにくい表現ではあるが、暗にAはラピスに笑えと言っている
それをわかってかどうか、それはラピスにしかわからないことだが、溜まってた涙をぬぐい、柔らかな笑顔をAへと向け、静かに口を開く

ラ「A、また、会う」

フ「あぁ、いずれまた」

ふわりと室内に柔らかな風が起き、パタパタを身に着けた衣服が揺れる
Aはたなびく髪を耳にかけ、フッと小さく笑みを浮かべると、静かにラピスを見据えた

フ「これからの貴様らの未来が幸多からんことを、願っている」

部屋に流れる風が強さをまし、どこからともなく白い花びらが舞う
目の前を覆い尽くすほどの白い花びらと強い風は視界を遮り、Aの姿が見えなくなる

風が収まり、次に視界が開けた時にはAの姿はどこにも見えなかった
代わりに、何もなかったはずの机の上に、美しく咲き誇る1輪の白いダイヤモンドリリーが静かに添えられていたのだった









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ダイヤモンドリリーの花言葉


『また会う日を楽しみに』



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