【怠惰な王子と元教育係】瞳の邂逅【無償の………】

41＊読めない本 ページ44

腕に抱えていた分厚い本を宙に浮かせ、最初のページからパラパラと結構なスピードでめくられていき、他の本も遅れて表紙を開かせ、ページをめくっていく

ス「しかし大した量の本だ、うちの資料室や書庫がかわいく見えるぜぇ」

ぐるりと書斎を見渡し、本棚に隙間なく埋められた本に思わずため息が出る
ラピスは一体どんなことが書いているのか気になったのか、一番低い棚に入った青い表紙の薄めの本を引き出す
表紙には美しい風景画は描かれ、タイトルはどこにも書かれていないものの、その絵に惹かれ、ラピスはページをめくってみる

ラ「……………読める、ない………」

開いてみたはいいのだが、奇奇怪怪、読解不能な文字の羅列
一体何を書いているのか一文字も読むことができず、ラピスはすこししょんぼりとする

フ「読めなくて当然だ、そこに書かれた文字は我ら魔術師が生み出した独自の文字、他種族が読むことはほぼ不可能だ」

ラ「A、電話、話す、言葉、同じ？」

フ「そうだな」

ス「つまり、電話の相手は魔術師ってことか」

フ「そんなところだ」

話している間にすべての本を読み終えたのか、ぱたりとすこし重みをもって本が閉じられる
本を浮かせたまま、机の後ろの棚へと近づき、紫色の背表紙のやや厚めの本を取り出す
それはすべてのページが白紙のもので、瞳を怪しく光らせればひとりでに文字が刻まれていった
2分もしないうちに本のすべてのページに文字が刻まれ、満足げに頷けば静かに本を閉じた

文字で埋めきった本に黒いリボンで封を施し、魔術で出現させた赤い鷲に預ける
緑と黒のオッドアイを持った鷲は強靭な爪でしっかりと本を掴むと、天井高く、その姿を消していった

ス「仕事ってのは今のか」

フ「98年前に創った魔術の資料が欲しいと言われたのでな、詳細にまとめなおしたものをあれに届けさせたのだ」

多くの本が並ぶ書斎だが、その中でも特に大事なものはA自身の研究資料
とりわけ分厚く、とにかく文字で埋められた資料だが、それらすべてが彼女の努力の結晶なのだ

フ「さて、要件は終わった、ベル達のところへ戻るとしようか」

浮遊させたままの本や資料を当初の位置へと戻し、ぐるりと本棚を見渡したあと、扉のほうへと足を進める

―――

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