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5】黒フードの猫/和也 ページ5

∬∬∬





和也「行ってくるけど、大丈夫ね?…飯、食べたら ちゃんと風呂入って、そんでちゃんと寝るんだよ?分かった?」





「うん」とだけ答えた茶色の毛玉は


しょぼくれて、いかにも不服そうにソファーに寝転ぶ。





たかが数時間の同窓会。


その間離れる…少しの「孤独」さえ、耐えられない…情けない猫男。





和也「…だから、前から何度も言ってあったでしょ?今日はこうなるよって………そのためにDVDだって借りに行ったし、お菓子も飲み物も好きなの買ってやったんだから…… ちょっと、聞いてんの?」


智「…聞いてるよ。」


和也「あっそ…じゃ、行ってくるね?」


智「……う〜〜……」


和也「…唸るなっての!全く……これだけ返したら、早目に戻るから。…だから、ちょっと我慢してな、ね?(笑)」





∬∬∬


何とか玄関を出て


タクシーの捕まる大通りへと向かう。





そういえば…日の暮れた街を、こうして一人で歩くのは久しぶりだ。


俺の隣には、いつもあの猫…智がいる。


なつかないクセに、甘ったれ。


かまってやれば喜ぶクセに


一人の世界が大好きで、暇さえあれば絵を描いたり…模型を造ったり…


ふ(笑)


何だ アイツ…やっぱり、ただの大きな子供だわな。





目指す交差点では、チカチカと歩行者用の信号が点滅してる。


変わらぬ足取りで、赤になるのを眺めていると


後ろから、走って近づく足音が聞こえた。





智「……カズ……」


和也「…ん?…」





振り向くと、黒いパーカーを着た猫が


智「………ん!…」


握り拳を突き出して


智「…忘れ物!…」


ムスくれたヘの字口で、目をわざと逸らせて言った。





和也「…あ、そっか。……ありがとね。」





智は、「ふん」と…マンガみたいにハッキリと口にして


丸まった猫背にフードを揺らしながら


元の道を引き返して行く。





和也「…ふん、だって(笑)」





受け取った[忘れ物]をポケットにしまい


前を見たら、信号はまだ赤だったから


その黒い猫が


小さくなるまで…見送った。








∬∬∬

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作者名:サハラ | 作成日時:2011年11月5日 3時

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