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3】さん付けの男/翔 ページ3

∬∬∬





潤「…同窓会?…」


翔「うん、そう… だから今日、オレは残業出来ません。悪いね(笑)」


潤「…ま、どうぞごゆっくり……あ、それちょっと取って…」


翔「…ん……」





顕微鏡を覗きながら会話をするのが、ほぼいつもの俺らのスタイル


ミクロの世界は、拡大してしまうことに慣れると


意外にも単純で…


初めの頃の あの「宇宙」を目にしたような感動は


とうに何処かへ消えていた。





潤「そういえば、前に言ってた…あの友達は?…元気してんの?」


翔「…ああ… …最近、あんま連絡とって無いからなぁ… …今日来るんじゃね?」


潤「思い出した…そん時の薬代、1250円。まだもらって無いんですけど…」


翔「……ん?そうだった?」


潤「明日の昼飯、ゴチになります…風来軒の焼肉定食でいいよ。」


翔「…お前、あれ… 確か1500円だろ?ふざけんなよなぁ…ったく」





この時


潤に薬代を請求されるまで


頭の中から『アイツ』のことは、綺麗サッパリ抜けていた。





∬∬∬





和也『…製薬会社って、いろんな薬…手に入るんでしょ?』


翔『比較的ね、何か探してんの?』


和也『いや、ちょっと…寝れなくてさ(笑) ここでもらうの、正直面倒くさいんだわ。市販のは効き目弱いし…』


翔『ああ、なら良いのがあるから今度持って来るよ。あんま他の人に言われると困るけど(笑)…木曜なら、大抵この病院に寄るから…そん時でいい?』


和也『うん。じゃ、また来週 ここで。ありがとね翔さん。』








…『翔さん』…





学生時代つるんでいた友人の中で、そいつだけが


俺を『翔さん』と呼んでいた。


それがやけに印象的で……


だから、何年ぶりかの再会でも、すぐに以前の距離感を思い出させた。





∬∬∬





仕事を定時に終えた俺は


白衣を脱いで、ハンガーを片手に…


ただ、何となく


『アイツ、どうしてるかな…』


なんて程度に


『 翔さん 』と呼ぶ、宮下和也の顔を


思い出して、ロッカーを閉じた。







∬∬∬

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作者名:サハラ | 作成日時:2011年11月5日 3時

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