俺はあんたに恋した哀れな人間【探偵チームKZ事件ノート】

今更 ページ20

『今更そんなこと言ったって、何にもならないじゃないですか。そもそも、何で今言うんですか！』


父「すまない、俺らは、本当におまえを施設に預けたかったわけじゃないんだよ。」


義父…いや、父さんなのか。


父さんはいつもの口調じゃなくなっていた。


父「おまえを生んだあと、あいつはな、言ったんだよ。「今はお父さんやお母さんに、育てるのは反対されたけど、私は絶対にAを迎えに行くから。」ってな。」


『そうだったんですか。』


そして、少しすると義父は悲しそうな顔になる。


父「でも、やっとおまえを見つけたと思った直後、あいつはうつ病になったんだ。症状はどんどん悪化して、それから半年くらいして、自害した。原因は、親から軽蔑されていたからだとよ。16でガキなんて生んで、1度施設に預けたんだが、またすぐに連れてきて、何を考えてんだって。」


『じゃあ、俺の所為で、母さんは…』


父さんは小さく笑う。


父「おまえの所為じゃねぇよ。俺に責任がある。あいつとおまえを守るって、約束したのにな。」


『そう、ですか…』


父「帰るぞ。これ以上ここにいても、あいつは喜ばねぇ。」


『はい。』


また車に向かう。


帰ってる途中、父さんが言う。


父「おまえ、なんかいいことあったか？最近、雰囲気が明るくなった気がする。」


『いいことといえば、猫を飼い始めました。スコティッシュフォールドっていう種類です。』


父「写真あるか？」


父さんがそんなことを言ったのは初めてだった。


『あります。まだ子猫なんですけど、捨て猫だったんです。あ、ありました。』


そしてスマホの画面を見せる。


父「なかなかだな。でも、俺が飼ってる犬の方もいいぞ。」


『犬種は何ですか？』


父「狼犬だ。」


『珍しいじゃないですか。確か、日本の狼犬の多くは、カナダから輸入してるんですよね。』


前に本で見たことがある。


父「よく知ってるじゃねぇか。」


その後も、犬猫の話で盛り上がっていると、すぐに家に着いてしまった。


『今日はありがとうございました。さよなら。』


父「ああ。」


今日の父さんは人が変わったみたいだった。

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