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全員で抜けてくるな!と思ったが、間に合ったのでまぁいいか。本当は良くないけれど。しかし彼らはやるべきこともほぼやっていたので気が楽になった。


私の方でもなりすまし人物を探してみようと思い、裏方をスタッフさんの邪魔にならないように歩く。






誰一人いないところにたどり着いた。肌で感じる無機質な静寂。ここにはいないか、と思い踵を返そうとすると視界の端に薔薇のような赤色が見える。そちらを向くと背の高い赤髪の男性が立っていた。紅郎先輩か、と一瞬思ったが後ろ姿が違った。それにここにいる必要がない。私たちにとっても彼にとっても。ということは目の前にいる男性は誰だろう。もしかして......!


「あの、すみません」
「......なんだァおね〜さん、俺っちになンかようでもあンのかァ?」


と私の方に振り返って口を開く。口を開く前、目の前の彼の瞳が一瞬揺れた気がした。驚いたような焦ったような......そんな感情が入り乱れた顔をしていた、気がする。余裕ぶっている私も実は動揺している。会ったことがないはずなのに懐かしい感覚を思い出させる。無意識に髪についているリボンに触る。なんだろう何も私は持っていないことを知っているのに。


「ここは関係者以外立ち入り禁止のはずですが、あなたはどちら様でしょうか?」
「んー別に関係者ではあるんだけどなァ、とりあえず俺っちの名前は天城燐音!」

よろしくなァ、と言って握手をしてくる。......フレンドリーな人だな。

「で、おね〜さんの名前も教えてくれる?俺っちだけだとフェアじゃないと思わねェ?」

「え?あ、別にフェアとかどうとかは考えたことはないですけど......。名前は葛城Aです」

なんだろう、食えない人だ。彼への第一印象は裏を読んでも右や左のような予測しなかった場所をついていきそうな予想外の人というものだった。

「都会の人は頭が硬いなァ。これが都会病の弊害か!」

と、都会病.....?都会の思想に染まった人を彼はそういうのか。

とりあえずトリスタの元に戻ろうとした時だった。


「______兄さん!」

と叫びに近い声を出しながら近づいてくる人がいる。

「僕だよ!一彩だ!天城一彩!あなたの弟だよっ、まさか忘れたとは言わせない!」

天城一彩......?確か接触禁止だったはず......!自分の頭から警鐘が鳴っていた。流石に雇い主の指示に背くことはできない。そろり、と後ろに逃げようとしていました。しかしがっちりと天城燐音に腕を握られていました。

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作者名:月海 | 作成日時:2020年10月17日 20時

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