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別にそいつがどんな奴でも興味はなかったが、席を認識するために目を向けると、驚きで動きが止まる。
一瞬の事ではあるが、目が離せなかった。
「ふあい…」と気の抜けた返事と共に目を擦って起き上がった人物が、凄く見た目が可愛らしいにも関わらず、着ていたのが学ランだったから。
(男……?)
そう疑問に思い続けながら自分の席に着き、鞄を机にかけているとその”伊野尾”と呼ばれていた人が俺に声を掛けてくる。
「よろしく〜」
声を聴く限り、やはり男で間違いはないようだ。
俺は相変わらず愛想なくその言葉を返すことしか出来なかったが、当の本人は何も気にしていないようだった。
まあ丁度いい。
俺だって、無駄な戯れはしたくない。
「ねえ、裕翔は東京から来たんだろ!?」
「何でこんな島に転校してきたの?」
……したくない、が、
避ける事は不可能に近かった。
休み時間になると、クラスの奴らが俺の机を囲むように集まってはこのように質問攻めだ。
流石にこれでシカトするのは良心が痛むので、少し慌てながら1つ1つの質問に端的に答えているが、質問が尽きる事は無かった。
東京では、別にクラスで至って普通の生徒だった俺も、いつの間にやらクラスのヒーローの様になってしまったこの状況に動揺していると、ふと、俺を取り囲む輪の奥で笑っている男と目が合う。
伊野尾と呼ばれていた彼は、俺を取り囲む輪には参加していなかった。
ただ、自分の席で頬杖をついて座ったまま、この様子を滑稽そうに見つめて笑っている。
「が、ん、ば、れ」
声は聞こえない。
ただ、彼のニヤけた口が、そう文字をなぞったように感じた。
他人事だと思いやがって、と彼の態度に少しムッとなるが、いやそもそもこれは本当に彼にとっては他人事だと自分で自分にツッコミを入れて、俺はまた彼らの質問に答え続けた。
「はあ……」
疲れた。疲れた疲れた。
さっきから同じ言葉が頭をループする。
もう、今日1日ずっとあのヒーロー状態が続いた。
今東京で流行ってるものは何?
この島に来てどう思った?
あそこ連れてってやるから遊ぼう!
もう一気に喋り続けられた所為で、せっかくして貰った自己紹介も、顔と名前がごちゃごちゃだ。
「お疲れ様でした」
学校から出て、暫く歩いていると上の方から声がする。
俺はそれに釣られて上を見上げると、そこには人の家の石垣の上に座り込んでいる、あの隣の席の男がいた。
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あんこ(プロフ) - ユリアさん» ユリアさん!ありがとうございます。゚(゚^∀^゚)゚。時間かかってしまいすみませんでした!是非、ゆといの楽しんで頂けると嬉しいです!! (2018年9月30日 12時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
ユリア - あんこさん、完結おめでとうございます!遅くなってすみません。まだ最後まで読んでいないのでゆっくり読もうと思います!新作はやまいのですね!やったーー(*´ω`*)嬉しいです。新作の方も楽しみにしてます! (2018年9月30日 0時) (レス) id: 5d6e48b7e5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - めめさん» ありがとうございます!!1番しっとりした作品にするつもりです。見守って頂けますと幸いです。よろしくお願いします! (2018年9月15日 23時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - すごくしっとりしたこのお話の世界観が好きです。更新頑張ってください! (2018年9月15日 22時) (レス) id: edc3e92603 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 佐々木さん» 佐々木さんコメントありがとうございます(/*´ `)/いやむしろドキドキ初挑戦中です(笑)ytin.....頑張りたい!!!(笑) (2018年7月3日 22時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんこ | 作成日時:2018年6月16日 22時