花見 ページ5
「段差きいつけなよ」
「はーい」
しょっぴくんに手を引かれながら、屋上の扉をくぐる。ふわっとした暖かさが心地良くて、うっすらと涙が出てきた。
この病院は屋上に大きな桜が植わっている。しょっぴくんがいなければきっとそれを知ることもなかっただろう。
ふわふわと舞う花びらを手のひらで掴む。柔らかくて、優しくて、いい匂いで、少し力を入れたら簡単にグチャッとなる
ぽろぽろと涙をこぼしながら花びらを見つめる私に、しょっぴくんは優しく頭を撫でてくれた。
しょっぴくんを見上げると、苦笑しながら涙を拭ってくれる。
「ねぇしょっぴくん。今ここで死んだらさ、私多分後悔しないよ？」
「それ、どういう脅しなん？」
「幸せってこと」
「………Aには、もっと幸せになって欲しいけどな」
「これ以上幸せになったら、死ねなくなっちゃう」
「………………」
私が困ったように笑うと、しょっぴくんは悲しそうに顔を歪ませた
「ええやん別に。死ななくてええやん。生きてや。生きる為に頑張ってや」
縋るようなそんな声に、私は何も返せなかった。それは無理なことだと、私は知っていた。
だって、それは酷く残酷なこと。僅か30%にかけるようなもの。
私はしょっぴくんのシャツを握り、その胸に頭をトンと当てる。しょっぴくんの想いも、理解できてしまう私がいる。
理解できるからこそ私は何も言えない。
しばらくそうしていたけれど、少し息を吐くとしょっぴくんの顔を見上げた。
その瞳は悲しげに揺れていたけど、でもその表情は優しかった
「………………花見、しよ？」
「………はい」
二人で団子を食べながら桜を見て、戯けて、笑って、彼の膝枕で昼寝して………幸せを満喫した
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作者名：ニーナ | 作成日時：2022年2月28日 16時
