理性と野性は相容れない【花宮真】

地縛霊―7― ページ7

『おかえり真！今日のお弁当どうだった？自信作だったんだよ！』


「何が自信作だバァカ！あんなもん食えるわけねぇだろ」




結局昨日こいつの言う事を無視した腹いせに決まっている

もうこいつに二度と作らせねぇ




『え……食べてくれなかったの？頑張って作ったのに』


「頼んでねぇもん勝手に作られても余計なお世話なんだよ」


『何よ！喜ぶと思って作ったのに！真のバカ！アホ！おたんこなす！もう知らない！』


「誰がおたんこなすだ！っておい！」




あいつは知能の低い言葉で一方的に罵った後、それ以上聞く耳を持たず部屋の奥へと姿を消した

俺はそんなあいつを放置し、とりあえず自室に行って着替えを済ます




リビングに戻ればいつも通りあいつがいると思った

でも、まだ姿は見えない

いつもはやかましくあいつが話しかけてくるから気付かなかったが、一人だと大分この部屋は広く、そして静かだ

机の上を見ると、あいつが用意しただろう今日の夕飯が置いてあった

『真、いつも勉強と部活お疲れ様！』と、あいつが書いたメッセージが添えてある

普段は直接言ってくるくせに、今日みたいな日に限って変な気を回しやがる




俺は目の前のオムライスを静かに食べ始めた

スプーンが皿にぶつかる音が、妙に耳障りに感じる

綺麗に剥かれたリンゴが美味く感じない




俺はなぜ、こんなにイライラしているんだ

自分でも説明がつかない感情に、余計にイライラする

あいつが居ない方が静かで過ごしやすいのに、どうも居心地が悪い




「……元々、俺には関係ないことだろ」




あいつが今更居なくなったって、俺には関係ない

そう自分に言い聞かせ、食べ終わった食器を片付ける


何かをしていれば気が紛れると思った俺はさっさとシャワーを済ませ、読みかけの本を開いた

でも、それも1時間もすれば終わってしまった

もうストックの本もない




「新しい本でも買うか」




そう思い立った俺は次にパソコンを開いた

その時、ある事に気付く




「何だこれ……キャラ弁？」




検索エンジンに、覚えのない検索履歴が残されていた

何事かと履歴一覧を見ると、他にも「お弁当 レシピ」、「肉じゃが 作り方」など……ここ最近俺が食べた食事メニューが出てきた

そういえば、思い返してみればこの数ヶ月……毎日違う物を食べてた気がする




「あいつ、こんな手の込んだ事わざわざしてたのかよ」




やっぱり……あいつは厄介な地縛霊だ

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