理性と野性は相容れない【花宮真】

花宮×蓮水―6― ページ40

"「悪い、今気付いた」"




その声の近さに、まるで耳元で囁かれているような気分に陥る




"「起こしたか？」"


『い、いえ！起きてたので大丈夫です！電話、ありがとうございます！』




変な事を口走らないように、声が上ずらないように気をつけながら話す

この心臓の音まで聞こえていたらどうしよう




"「今朝話した件だけど、今週の日曜は空いてるか？俺の仕事も休みだから」"


『空いてます！大丈夫です！』


"「わかった。じゃぁ、日曜の午後1時に玄関前で待ってる」"


『はい！わかりました！楽しみにしています！』


"「それじゃぁ、学生はもう寝ろ」"


『はい、そうさせてもらいます。あの、花宮さん……』


"「？」"


『……お仕事お疲れ様です。おやすみなさい』


"「……あぁ、おやすみ」"




少しだけ名残惜しいけど、私はそこで通話の終了ボタンを押した

そしてベッドに横たわっている愛用の抱き枕を目一杯抱き締める

あの花宮さんが私に、優しくおやすみと言ってくれた

嬉しくて、まだドキドキしていて、何度も思い出しては恥ずかしくなって、布団の上でバタバタして……




『かっこいいなぁ……』




その日、なかなか寝付けなかったのは言うまでもない




＊




約束の日曜日


家を出る前に、再度鏡に映る自分を確認する

昨日、朱莉ちゃんに選んでもらった春色のワンピースと、お気に入りの髪飾り

念入りに身なりをチェックして、私は玄関のドアを開けた




『花宮さん、お待たせしました』




そこには既に携帯を片手に待っている花宮さんがいた

この前も私服姿を見たけど、バランスよく着こなされたジャケットにパンツは花宮さんのかっこよさをより引き立てている

変に着飾らず、シンプルが似合う




「どこに行きたいか決まったか？」


『えっと……○×デパートでもいいですか……？』


「あぁ、あそこか。俺はいいけど、若い奴ってショッピングモールとかの方が楽しいんじゃないのか？」


『もちろん、モールは好きです！でも、今日はデパートに行きたくて』


「ふーん……。それなら行くか」


『はい！』




＿＿＿＿＿＿＿


あと10話で収まるのか……ﾄﾞｷﾄﾞｷ

花宮×蓮水―7―→←花宮×蓮水―5―

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す