理性と野性は相容れない【花宮真】

地縛霊―2― ページ2

俺は自分の右手と、地縛霊と名乗る少女を交互に見つめる

こいつは幽霊で、だから触れなくて、でも可視化できてて……って、理解できるわけがない

俺は今まで幽霊と言葉を交わしていたのか？自分が知らないだけでかなり霊感が強かったとか？冗談だろ




『ん？』




チラリと地縛霊を再度確認すると、そいつは視線に気が付いたのかニコリと笑った

容姿は同い年くらいの一般人にしか見えない

言葉も一応通じる

でも




「俺にどうしろって言うんだよ……」




現実味がなさ過ぎて、俺の思考回路は限界を迎えていた




『そんなに落ち込まないでよ;;私だっていつか成仏すればいなくなるんだから！』


「いつかって……お前、いつからここにいるんだよ」


『あれ、そういえばいつからいるんだろう……初めてカレンダー見た時が20__年だったから……』


「少なくとも7年はここにいる」


『わぁ、もうそんなに経ってるんだ！幽霊だと時間間隔狂うなぁ』


「んなのん気な事言ってる暇があったらさっさと成仏しろよ！」


『そんな事言われても、成仏の仕方がわからないからここにいるんだよ？』


「わからないだと！？だったら出てけ！ここは俺の家だ！」


『もう、ああ言えばこう言う！そもそも先にいたのは私の方で、そっちが勝手に後から来たんだから我慢してよ！』


「地縛霊の事情なんて俺が知るか！！」


『この分からず屋！短気！バカ！』




俺達の喧嘩はだんだんとヒートアップしていき、気付いたらお互い睨み合いながら肩で息をしていた

否、ふと地縛霊が顔を緩めたと思いきや、そのまま涙を滲ませながら笑い出した




『久しぶりに人と口喧嘩したら楽しくなっちゃった』




人の気も知らず、能天気な地縛霊はまた笑顔を浮かべた

このまま一緒にいたらどんどん俺のペースが崩されてしまう




『ねぇ、私をここから追い出したいなら、成仏できる方法を一緒に探してよ』


「なんで俺がそんな面倒なことを……」


『だってそうしないと、ここから動けないんだもん』




たしかに、来週にはもう高校に通わなければならない。それなのにまた新しい物件を探して引越しなんてしている余裕はない

そもそも引っ越したばかりですぐに引越しをするなんてできるわけもないか……親に「新しい部屋に地縛霊がいるから引っ越したい」って言うのか？

……俺の頭がおかしくなったと勘違いされかねない

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