地縛霊―19― ページ19
Aが成仏したいと言った夜
俺は布団に入ってもなかなか寝付けないでいた
今まで、あいつから成仏したいなんて言った事はなかった。それを、今更になってどうして……
考えても考えても、わからない
結局答えが見つからないまま、気付いたら夢の中へと入っていた
『おはよう、真』
「……はよ」
朝起きると、いつも通りAが朝食と弁当の支度をしている
見慣れた風景
変わらない挨拶
漂う味噌汁の香り
異様なこの光景が、いつから俺の中で当たり前になったんだろう
『玉子焼き、今日は綺麗に焼けたんだよ』
そう言って自慢げに話すAは、楽しそうだ
いや、楽しんでいるフリをしているのかもしれない
「あぁ、そうだな。…………味も美味い」
『!』
最後、らしくもない事を言ったせいか、少しだけ小声になった気がする
でも、Aには聞こえていたらしい
嬉しそうに笑っていた
『いってらっしゃい』
「……行って来る」
俺はAの方を振り向く事ができず、そのまま玄関を閉めた
学校への道のりが、少しだけ……本当に少しだけ、軽い気がする
それからも俺は、「ただいま」とか「美味い」とか「さんきゅ」とか……意識的に言葉にするようになった
『ねぇねぇ真!一緒に小公女セー○見よ?』
「……早く準備しろよ」
『え、いいの?』
「お前が言い出したんだろ」
『ありがとう……!』
こいつが喜びそうな事を、思いつく限り実行した
それにしても、なんでいきなり小公女○ーラなんだよ……チョイスが古い;;
そういえば、昔姉貴も見ていた気がする。なぜか途中から見るのをやめていたが……確か、主人公の父親が亡くなって、寄宿学校に通っていた主人公は生徒からメイドになり、いじめに遭うという話だったような……
『……最近の真、ちょっと変わったよね』
「は……?」
アニメに集中しているかと思えば、いきなりAが話し始めた
『私があんな事言ったから、未練をなくそうと私の喜ぶ事してくれているんでしょ……?ありがとう』
違う。そんな理由でやっていたわけではない
俺はただ、この変わり映えのない生活に、こいつが嫌気がさしたんじゃないかって……だからいきなり、成仏したいなんて言い出したんだって、そう思った
俺が挨拶とか礼を言うだけで、お前が嬉しそうに笑うから、俺は……
成仏したいなんて考えを、やめさせられると思ったんだ
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みかん(プロフ) - 五月雨雫さん» わぁぁコメントありがとうございます(´;ω;`)!!!完結後にも感想をいただき本当に嬉しいです(泣)おかげさまで私も作ってよかったと思えました!!またどこかでお会いできることを楽しみにしています(*‘∀‘) (2020年5月11日 9時) (レス) id: 7906a9a948 (このIDを非表示/違反報告)
五月雨雫(プロフ) - 全話読ませてもらいました!!凄く好みの感動系でなんと言ったら良いか…!作品、物凄く好きです。読者一意見として作ってくださってありがとうございます!! (2020年5月10日 8時) (レス) id: 603d70d68d (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - さくみさん» ご丁寧に返信までいただきありがとうございます(泣)感謝感激です(´;ω;`)これからも誰かに感動してもらえるような作品を作れるように励もうと思います!こちらこそありがとうございました(泣) (2019年11月20日 11時) (レス) id: 7906a9a948 (このIDを非表示/違反報告)
さくみ(プロフ) - こちらこそ本当に素敵な作品をありがとうございました。最後のお話で本当に感動で泣けました泣ありがとうございました!!! (2019年11月19日 23時) (レス) id: 7862236ae4 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - さくみさん» あああぁぁああぁ(嬉し過ぎて語彙力が著しく低下しました)笑。コメントありがとうございます!!まさか、自分の作品で感動していただける日が来るとは……その事実に私も感動しました(泣)作ってよかったと思えました!!本当にありがとうございます!! (2019年11月19日 22時) (レス) id: 60ab1a28d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかん | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/alice99101/
作成日時:2019年10月1日 17時