第9話 ページ9
全身を丁寧に細かく綺麗に洗うよう言われ、キノは素直に従った。
『ねぇルル、二日前にも身体を洗ったのに、どうしても今日も入らなくちゃいけないの？』
「お誕生日を迎えられましたので……今夜は特別なのでございます」
ルルはどこか元気がなかった。
『………ふぅん』
ルルが身体を丁寧に拭き上げ、寝巻き用に新しいナイトドレスをキノに着せ始めた。
純白のドレス。
それはまるで、ウエディングドレスのようにさえ見えた。
『何これ、素敵！』
キノは目を輝かせ、嬉しそうにくるりと回ってみせた。
「……ご当主様がご用意してくださったのでございます」
『お父様が！？』
キノは更に嬉しそうに喜んだ。
スネイプは嫌な予感がし始めた。
「ブラベウス！どこまで見せるつもりだ！？」
「――言ったはずです。全てですよ。あなたは見なくてはなりません――」
「……っ……」
ーーダメだ……この先は……見たくない！
スネイプはギュッと拳を握り締めた。
ブラベウスは冷めた目で、キノの過去を見つめ続けた。
―――………エヴァ様に意志があるなら、何故父親ではなく、この娘を選んだのか………私は知りたい―――
ルルがキノの長く綺麗な髪を櫛で梳かし、摘んできた花を髪と一緒に編み込ませた。
『わあっ、可愛いい！』
キノが喜びながら、色んな角度から自分の髪を見つめる。
ふと、ルルが暗い顔をしているのに気づいた。
『ルル？どうしたの？元気がないけどーー』
キノはルルの顔を覗いた。
ルルは深刻そうに、表情を暗くさせている。
「………お嬢様………その………」
言いづらいことでもあるのか、口籠ってしまった。
『なあに？ルル、言って』
「…………その………ル、ルルは、いつ如何なる時も、お嬢様がルルの名前を叫んでくだされば、ルルはどんなことがあろうとも！ルルは、ルルはーーお嬢様の前に現れます！！」
ルルは捲し立てるように大声で言った。
ルルらしからぬ言動に、キノは唖然となった。
『ど……どうしたの、ルル？いきなり何を言うかと思えば……ちょっと変よ？私を祝うために、張り切り過ぎちゃった？？』
ルルは首を強く振った。
そして、キノの両手をガシッと掴み、ギュッと力を込めて握り締めた。
キノはまたもやキョトンとなった。
『ルルーー？』
「お嬢様！辛いことがあれば、ルルを大声で呼んでくださいませ！さすれば、ルルはお嬢様の元へ飛んでいけます！！」
『はい？？？』
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
