第44話 ページ44
「違うわ。キノの教えのお陰よ。本当にありがとう。本を読む楽しさを教えてくれたのは、キノ、あなたなのよ。あなたに出会わなければ、あたしは一生読み書きできない人生を送っていたわ」
『ローズ……』
キノは照れるのをやめ、ローズをマジマジと見た。
「だから、気付くことができたの。あなたはここに居ちゃいけない人だってことにーー」
『ちょ、ちょっと待って。ローズ、どう意味？』
ここを去れと言われているのが、嫌でもわかった。
『なんでーーそんなこと言うの？わ、私をーー嫌いになった……？』
今にも泣き出しそうなキノを見て、ローズは急いで言った。
「嫌いになんてならないわよ！寧ろ、とっても大好きなの！！」
その言葉に、キノの涙が引っ込んだ。
『わーー私もーーローズが大好きよ。だから、ずっと一緒にいれることが幸せでーーローズと過ごす毎日が私にとっては特別なのーー』
しかし、ローズは首を横に振った。
「それじゃダメなのよ」
『ーーえ？』
「その素晴らしい才能をここで終わらすわけにはいかないわ。キノ、あたしの話をちゃんと聞いて！」
ショックで半パニックになったキノに、ローズは声をあげた。
すぐさま、ギュッとキノは口を閉ざしてローズを見つめた。
「キノ、あなたは外の世界へ出るべき人間よ。あなたは物凄い情報量を持っているし、何より魔法も凄い……ルイよりもーーね。だから、魔法の世界？があるのかわからないけど、そこへ行ってあたしのような貧しい子供達に色んなあなたの持つ知識を広めてあげるのーー何よりもそれがあなたに相応しいって、あたし思ったの！」
『ロー……ズ……』
キノは内心驚いていた。
ローズがこんなにも自分のことを思ってくれていたことに。
正直、キノ自身がそう感じている部分があった。
ローズに字を教えている時、難しい単語や発音を理解してくれた時の喜びをーー何より、初めてわかってくれた時の嬉しそうな顔をーーキノはそれを目の当たりにする度に喜びを感じていたのだ。
『ありがとう、ローズ。そんなふうに……思っていてくれたなんて……知らなかった。でも、私の幸せはローズと一緒にいることなの。ここを離れるなんてできないし、私は何処へも行かない』
「ダメよ。キノ、ちゃんと聞いてた？あたしの思いが伝わったんならーー」
『あなたを残して行けないわ！』
ローズの言葉を塞ぐように、キノが大声で言った。
『私が居なくなれば、あなたはまた酷い目に合うかもしれない！』
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
