第32話 ページ32
目が覚めたキノは起きてすぐに太陽の高さを確認した。
陽光が真上にきている。
時間でいうなら正午頃か。
『！』
ーーやられた！薬を盛られたんだわ！！
『ルル！』
キノはルルを呼びつけた。
しかし、ルルは現れない。
ーーお父様だ……お父様の指示で動けないんだわ！
一気に、嫌な予感が押寄せる。
ーーま……まさか……。
すぐさまマントを羽織ると、キノは魔法陣を出して消えた。
現れた場所は、ローズの居る村。
キノは人目のつかない場所から現れるとすぐさまローズの母親を探した。
村で作業している者達が不審な目で駆け回るキノを見てくるが、それを気にしている余裕はなかった。
奥まったところにある小さな家の前で、女性が鶏の羽根をむしっているのが見えた。
ローズの母親だった。
『すみません！』
女は顔を上げて、キノを見て目を丸くする。
「どうしたんだい？」
『ローズは何処ですか！？』
女は目を瞬かせた。
「ローズ？そんな名前の子はこの村には居ないよ」
『！！？』
キノは目を見開いた。
『何を言ってーーローズはあなたの娘では！？』
「子供はいるけど、あたしの子供はみんな男さね」
『！そんなわけーー』
女の目は、嘘をついているようには見えなかった。
『ーー……』
「おかしな子だね。あんた、何処から来たんだい？」
ローズの母親はキノを不審な目でジロジロ見ながら羽をむしり続けて言った。
『……わ、私の……人違いのようでした。失礼しました！』
「え？ちょーー」
キノは女に背を向け、森に向かって走り出した。
ーーもしかしたら、池にいるかも！
息を切らして急いで池に向かうも、ここにもローズの姿はなかった。
ーー……ああ……そんな……！
『……ローズは……屋敷にいる……』
魔法陣で屋敷に戻ったキノは、集中してローズの気配を探った。
『！！』
部屋から飛び出して一目散に向かった先はーー父親の部屋。
キノは両手で父親の部屋の扉を勢いよくこじ開けた。
部屋には、ルイの姿はなかった。
存在感の強いベッドに注目すると、
シーツで身体全体を隠している。
心臓が早く鼓動するのを聞きながら、キノはゆっくりとベッドに近づいた。
ベッドの周りには服らしき、女性物の衣類が散らばっている。
その衣類を見て、我が目を疑った。
『……ロー……ズ……』
その声に反応したのか、こんもり膨らんだシーツが大きく動いた。
『！』
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
