第31話 ページ31
その言葉が胸に突き刺さるように染み込んだ。
何という深く重みのある特別な言葉なのだろう。
ーー親友……一番大事な友達……なんて素敵な言葉なの。
キノがジ〜ンとしていると、ローズが急かした。
「それで？逃げてってどういう意味よ」
『！そ、そうだった。ローズ、私と一緒に逃げてほしいの！！』
「ハァ！？だから何でよ？？」
『私のちーー』
その時、ローズを呼ぶ声が遠くから聞こえてきた。
ローズとキノが声のする方へ顔を向ける。
「……父さんと母さんの声だわーーキノ、ごめんーーあたし、行かなくちゃ！」
ローズは森の中へと駆け出した。
『！ローズ、待って！！』
「キノ！明日またここで会いましょう！！あんたのことは喋らないから安心して！上手くはぐらかしておくから！！じゃあまたねー！」
『ローズ！！』
ローズは手を振りながら森を駆け抜けるように行ってしまった。
ひとりぽつんと残されたキノは呆然と佇んでいた。
『……どうしよう……』
しばらく考え、そして覚悟を決めた。
『こうなったら……お父様を監視するしか……それしか方法はないわ……！』
魔法陣を出してキノは屋敷に戻った。
屋敷に戻ったキノに、すぐにルルが対応した。
「お嬢様！何処へ行かれていたのですか！？」
『ごめんね、ルルーーちょっとだけ外に出てただけだから……』
「お身体をこんなに冷してーーお嬢様、すぐに湯浴みの準備を致します！」
ルルは慌ただしい動きで風呂の支度を始めた。
『ルルーー今日はいいからーー』
「お嬢様のお身体が冷えております！それに、裾がこんなに汚れているではありませんか！！」
『あ、ほんとだ…』
羊小屋までの道が悪路だったのを思い出した。
「こんなお姿を見られたら、また酷いことを言われてしまいます！」
『……わかったわ』
浴室に入ると様々なハーブが入れられており、丁度良い温度とハーブの効能で冷えた身体が温もっていくような心地良さだった。
「お嬢様、飲み物も一緒に如何でしょう？」
『ありがとう。頂くわ』
キノは差し出されたゴブレットを取り、ゴクゴクッと飲み干した。
僅か数分で、急激に眠くなった。
ーー早くお父様の監視を……なのに……眠……。
強烈な眠気、瞼がどんどん重くなり、眠ってしまった。
完全に熟睡したのを確認したルルの大きな瞳から涙が溢れた。
「も……申し訳ございません……お嬢様……」
キノはベッドに寝かされ、そのまま朝まで目が覚めることはなかった。
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作者名：あっちゃん | 作成日時：2023年5月5日 9時
