34話 ページ35
目が覚める。身体がびくりと震え、手と舌に怠さと痛みを感じ、全てを思い出す。
オレのベッドの隣にある椅子に座って、ベッドに突っ伏し寝こけているAくんを見やった。
Aくんの寝顔をぼーっと見ていると。
顔には涙の伝った痕があって。
(……)
思考が停止する。Aくんのこういう姿を見る度に、頭が止まる。もう少し色々考えなければいけないと思うのに。そして結果、Aくんの好きにさせてしまう。
Aくんの涙痕を指で辿っていると、Aくんが瞳を開ける。
「……ぁ」
Aくんの瞳と視線が合うと、身体が震える。恐怖由来の震えかと一瞬思ったが、恐らくそこまで単純なものじゃない。恐怖と、疲労と、懇願と、服従と、後悔と、謝罪と、虚栄と、少しの期待と、色々が混ざって。
また思考を止めたくなる。もう嫌だ。何も考えたくない。疲れているから、好きにしてほしい。好きにしてほしいけど、できるなら放っておいてほしい。瞬きをすると、何が原因かわからない涙がひとすじだけ出た。あくびが出るので、あくびのせいにした。
「……ラギ、ちゃ」
「……なんスか」
「つかれ、たね」
「……そっスね」
「Aのこと、きらいに、なた？」
嫌いになったのだろうか、と自分に問い掛けてみる。しかし、しかし、笑ってしまうほど明快に、答えはそこにあって。
その答えが、あまりにも残酷なものだから。
「微塵も……嫌いになってないっス」
「……」
「……なんでっスかね」
「……」
「もう、わけ、わかんねぇ」
溜め息を吐く。身体中が熱を持っているし、怠いし、頭痛もする。
Aくんのことが怖いと思う。本当に思ってるのか？わかんねぇ。でも、そこに居られるのは別に不愉快じゃない。じゃあ思ってないんじゃないスか？とオレが言う。でも、Aくんと目が合うと恐怖と、色々な感情で身体が、歯が音を立ててガチガチと震える。意味わかんねぇ。
「……オレの、頭も、ぐちゃぐちゃになっちゃってるんスかね」
「……」
「……」
沈黙は不愉快じゃない。心地よくもねぇけど。
「ラギ、ちゃ」
「……なんスか」
「A、……まだ、良い子、かなぁ」
「……」
「ておくれ？」
Aくんの涙痕を、涙が洗い流す。
口には微笑みを浮かべたままなのに、Aくんは、これまでで一番悲しそうな表情で泣いていた。なんで笑ってんのに悲しそうって思うんだろう、と見当違いなことを考えながら、オレはAくんの涙を指で拭ってやる。
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功徳(プロフ) - オパールさん» ありがとうございます！よろしければ他の作品も読んでくださると好みに合うかもしれません🥰 (11月10日 20時) (
レス) id: e0d582f997 (このIDを非表示/違反報告)
オパール - とーっても…面白かったです！この作品を作ってくれて、ありがとうございます！ (11月10日 19時) (レス) @page42 id: e52a8096f8 (このIDを非表示/違反報告)
自分(プロフ) - 新.sinさん» 一気読みありがとうございます！これを気に入ってくださった方は私の別作品も気に入っていただけそうなのでおすすめさせていただいております……💕重ねてお読みいただきありがとうございました🥰🥰🥰 (2022年8月14日 16時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
新.sin(プロフ) - 一気読みしてきました。私が占ツクで見てきた作品史上最も好き！！って思いました！！素敵な作品をありがとうございました！ (2022年8月14日 15時) (レス) @page42 id: 03f8c9269c (このIDを非表示/違反報告)
自分(プロフ) - 黒恋さん» わーーいありがとうございましたお疲れ様でした〜！！！本当にありがとうございます……💕💕💕嬉しい嬉しいなあ…… (2022年6月2日 18時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
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