文通34 ページ35
御幸
「私、本当は当番じゃなかったですけど…
友達にどうしても変わって欲しいと言われて…
最初は断ってたんですけど、結局引き受けちゃって…」
「ほら、昼休み終わりにちょっと騒ぎというか…あったの知ってます?」と聞かれてわかった。
「中野だったっけ?が叫んでたやつ?」
「中野じゃなくて中田ですよ。はい、そうです」
「もしかして名前覚えるの苦手なんですか?」と笑顔で言われて「まあ…」と答えてしまった。
「確かに難しいですよね。特に堤なんてそうそういないですし。
あっ!でも御幸っていう名字も珍しいですよね」
「私初めて見ました」とこちらをまじまじと見てくるもんだから「そんな見んなよ」とついいつもの調子で冷たく言ってしまった。
「……なんかごめん」
フリーズしていたので申し訳なくなって謝る。
すると堤は慌てて「いやいや!ちょっとびっくりしただけです!」と言った。
「御幸くんはもっと女の子に優しくしたらモテるのに」
「別にモテなくていいよ」
「そんなことないでしょ?誰だってモテたいものです」
「でももうすでに御幸くんはモテてるか!」となぜか勝手に納得している。
「……ていうか敬語止めない?俺はタメ口なのにお前だけ後輩でも無いのに敬語だと違和感がある」
「え…でも…それだと…」
ゴニョゴニョ言っていてここまで聞こえない。
「ん?」
「あっいや!何でもないです!じゃあお言葉に甘えて…」
「ていうか時間!!」と腕時計を見た堤は叫んだ。
立ち上がった拍子に堤のポケットから紙がヒラヒラと落ちた。
黙って拾って中身を見ようとすると
堤に「ダメ!」と言って取られてしまった。
「じゃあ、私はこれで!御幸くんも先生が締める前にちゃんと出てね!!」
俺は返事をするのも忘れて
座ったままでいた。
渡す時に一瞬見えた紙の中身。
その中身には俺の字がしっかり書いてあった。
もしかしたらあいつが俺と手紙をやり取りしていた奴なのでは?
だからさっき喋ったばかりのしかも女子なのに楽しく過ごせたのでは?
高鳴る胸の音を押さえて
教室をあとにした。
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作者名:そら | 作成日時:2016年1月21日 20時