20.電話越し ページ22
誠凛の人達と別れた後、駅に向かって歩いていると私のポケットの中にある携帯が振動した。
ふと、腕時計を見ると時刻は夜の9時前を指していた。
この時間に電話ってことは…
急いで携帯を取り出すと、ディスプレイには高尾和成と表示されていた。
「はい、もしもし!」
『お、A?わり、ちょっと遅くなっちまった』
「全然大丈夫です!今日は何してたんですか?」
私がそう聞くと、和成先輩は楽しそうに今日行った所や体験した事をたくさん話してくれた。
和成先輩は、出発前に言ってくれたようにちゃんとこうして毎日欠かさず私に電話を掛けてくれる。
自分で言っといてなんだけど、最初は折角修学旅行に来てまで私にこうして時間を割いてくれることが申し訳なくて電話を断ろうとした。
でも、和成先輩は、会えない分声だけでも聞きたいと言ってくれた。こういう所で、ちゃんと私は大事にして貰えているんだなと実感した。
「…そうなんですね!すっごく楽しそうです!」
『そうなんだよ!いつかAとも来たいなって思ったよ』
「ぜひ!!」
食い気味に答えた私に和成先輩はははっと笑った。
『そういや、A今外にいんの?』
「あ、そうなんです。今帰る途中で」
『こんな時間に1人って危ないだろ。何してたんだよ』
和成先輩の心配そうな声に今日、実は誠凛の人と会った事、和成先輩の事をとても褒めていた事を伝えようとした時だった。
「Aちゃん!」
「伊月先輩!」
『……っ!』
後ろから名前を呼ばれて振り返ると、息を切らした伊月先輩が立っていた。
「これ、忘れ物だよ」
そう言って差し出されたのは、私のハンカチだった。
「あ、わざわざすみません!気付きませんでした」
私がそう言うと、伊月先輩は笑っていいんだと言った。
「それより…電話中だったよね。ごめん、声掛けてから気付いて…」
先輩のその言葉で、はっと気付く。
「か、和成先輩っ!」
『なんで…伊月さんとAが一緒にいんだよ…』
怒ってる…。電話越しでも分かるほど、和成先輩の声が低くなっている。
「違うんです!2人きりじゃなく……」
そこまで言いかけた時、ツーツーという音がして通話が切れた。
なんでこんな時に…
「電池切れ…」
「和成って…まさか高尾?」
私はただ何も言えずに、そこで止まっていた。
今私の頭の中は、勘違いだけど和成先輩を怒らせて、悲しませてしまったことでいっぱいだった。
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鏡子(プロフ) - ちょこれーとさん» ありがとうございます。私の推しは火神君です!確かにあの回は感動しましたね。私も好きです。 (2020年5月15日 16時) (レス) id: e35fb2372b (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと - 私の推しは高尾くんでっす。好きなシーンは、洛山vs秀徳で真ちゃんが『このチームで足手まといなど俺は知らない。』っていうシーンが大好きです。私は秀徳めっちゃ好きなので勝ってほしかったなぁ…。 (2020年2月27日 18時) (レス) id: 64be1a2e2a (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと - 鏡子さんの作品面白いです!ちなみに誰が一番好きですか? (2020年2月27日 18時) (レス) id: 64be1a2e2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鏡子 x他1人 | 作成日時:2019年2月4日 16時