45 ページ45
·
赤葦くんがちょうどいい高さにボールを上げる。タイミングを見て助走を始め、キュキュ、と靴が擦れる音がする。
両手を大きく後ろに振り上げ、足を踏み出す。そして上へ上へと地面を蹴り上げる。
重心、フォーム、踏切の位置、角度、力の配分。
教えてもらったこと全部意識しろ。
もう一度跳びたい。向こう側の世界を、もう一度。
バランスは崩れていない。タイミングも良い。
ネットの反対側に黒尾さんとツッキーがゆっくりと映る。
＿＿あれ、向こうの世界はこんなに広かっただろうか
ダンッ!!!
打ち付けられたような音にはっとし、我に返る。
気づけば、別に転びもふらつきもせず、上手く着地していた。
右手にはブロックをするときとは違った痺れと衝撃。
相手コートには叩きつけられたボール。
てんてん、と数回バウンドして転がっていく様子をその場にいた全員が固まって見ていた。
……打った…？
手に、当たって、バランスも崩さないで、それで、
＿＿飛べた
『っ………！！』
声にならない感情が喉の奥からせり上がってきて顔が歪む。
『…っ…よっ、しゃあっ……！！！』
拳を握りしめ、力強く振り上げた。それに木兎さんと黒尾さんが応えるように飛びかかってくる。
「ずーなり…！おまえ、ずーなりぃぃ！！！」
「跳べたじゃねーか！！」
肩を組まれて首に衝撃が来て苦しい。でもそんなことどうでもいいぐらい嬉しかった。
赤葦くんもよってきてすごいと褒めてくれる。ツッキーも控えめながら輪に混ざっていた。
『とべっ、俺、跳べたっ…！俺、また…！！』
「落ち着けスズチャン」
興奮しすぎてうまく喋れない。きっと目からぽろぽろと流れ出るこれも、気の所為ではないだろう。
『ありがとうございます…！本当にまた跳べるなんて…』
「諦めんなって言ったろ。
確かに、医師が跳べないって言ったのは正しかったんだろうけど、それは前と同じようにはってことだろ。
なら違う方法で跳べばいい。
俺らは可能性があることに諦めんななんて言わねぇよ」
その言葉に、黒尾さんが諦めるなと言ったときのことを思い出す。
あの時からずっと、彼らは俺が跳べると信じてくれていた。
彼らの力で跳べた。それが嬉しくて、また目から涙が溢れた。
「あの〜そろそろ食堂…って木兎！？後輩泣かせたの！？」
「ちがう！誤解だぁ！！」
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 404人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あなくま(プロフ) - あっびーさん» ありがとうございます！気まぐれ更新ではありますが頑張ります！澤村さん直してきますすみません (7月3日 6時) (
レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
あっびー - コメン卜失礼します！話とてもおもしろかったです！がんばってください！あと澤村が沢村になっていました (7月2日 15時) (レス) @page5 id: 9335c42a96 (このIDを非表示/違反報告)
あなくま(プロフ) - 怜央さん» ほんとですね…教えていただきありがとうございます！実は前にも消えちゃってたのでまた同じようなことがあるかもしれません…気をつけます！ (2022年10月14日 20時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
怜央(プロフ) - コメント失礼します！36話が消えちゃってますよ〜！ (2022年10月14日 20時) (レス) id: 8acdf4d0f3 (このIDを非表示/違反報告)
あなくま(プロフ) - ありがとうございます！できるだけ早く更新できるように頑張ります！ (2022年10月13日 16時) (レス) id: 995ed5925a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あなくま | 作成日時：2022年9月24日 14時
