Finally I.【東京喰種】 (ページ18)

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15.距離ページ18

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「さて、Aもお風呂から出てきたところで。」

『待て、沙絢眠そうだから寝かせてくる。』

「オカンか。」

『そういえば、中学の修学旅行で母役をやったこともあったな。』

ベッドに座り沙絢を寝かせ、頭をゆっくり、ゆっくり撫でる。
虚ろだった目はどんどん光を失っていき、やがて完全に瞼を閉じた。

『…何をどうやったら絢都と兄妹で生まれてくるんだか。』

「ほんっとそれな。」

すぴー、と穏やかに寝息を立てる沙絢は、白い衣を纏う天使のよう。
流石アオギリの天使様、絢都が独占したいのもよく分かる。
撫でる手を止めると、んっと声をあげてそれを急かした。
寝ていても感覚は残っているのか、それとも無意識か。

「…なんで、"こんな形"で生まれちゃったんだろうね。」

『定だったんだよ、誰も抗うことのできない。
例えそれを背負う奴がどれだけ小さく儚かろうと、どれだけ苦しもうと関係なく。』

「沙絢は知らないだろうね。」

『…そうだな。』

私達は、沙絢を失ってはいけない。
世界が滅ぼうとも、この世が終わろうとも、この子だけは。

『…………この前、沙絢にこう聞かれたんだ。』

「何？」

『"A姉は、愛を知ってるの？"って。
正直、どう答えようか迷った。』

「愛、ねぇ…。」

『なんつーか、私がよく知る愛はきっと世間一般とずれてるだろうし。
それに、"喰種に対する愛"なんて、まず存在してないんだよ。
無い物をどうやって言えばいいのか、本当分からなかった。』

撫でるたびに手をかする髪の毛は深い藍色で、まるで、何もかも冷たく、それでも優しく包み込む海のようだ。
そんな髪の毛が、沙絢の白い肌を飾る。
少しだけ、目の下にクマができていた。
当たり前だ、もう既に日付が変わっている。

「で、なんて答えたの。」

『…"自分が愛だと思えばそれが愛なんだよ"。』

「答えになってなくない？」

『思ってもないことだったからな。』

「そーゆーとこあるよね、心痛まないの？」

『沙絢だから、この言葉を真に受けるとは思わない。』

「ま、はっきり言って私よりしっかりしてるからねー。」

『説得力あるな。』

「ちょい待たんかこら。」

冗談だ、って笑いあえる関係が好き。
それ以下に下がるわけでもなく、それ以上に踏み込むわけでもない。
1mじゃ離れすぎ。10cmじゃ近すぎる。

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だから50cmがいい。