検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:14,449 hit

14.幸福 ページ17

.



ゴシゴシ、大袈裟すぎるのではないかと思う程の効果音が耳に触る。
動きが止まり、癖毛の間から見える目は真っ赤に腫れ上がっていた。


『…っはぁ…これじゃあ私が泣かせたみたいじゃん。』


間違ってないけど。


「…っぅ…。」


『…心配してくれてありがと。
まさか泣くなんて思わなかったし、ごめん。
今度はちゃんと行き先伝えてから出かけるな。』


沙絢との約束もあるしと思い、絢都の頭を一撫でしてから通る。
絢都が少し動いた気がした。

後ろから、スンッと鼻をすする音が聞こえてくる。
本当は絢都もきっと、女の前で涙なんか晒したくなかったんだろう。
私の中に芽生えつつある母性本能的な何かが刺激されたのだ。
もう、あれだけ素直さがあるならなんであんなグレるんだ。

母親は育てるの大変だったろうに…。


『つか、絢都の口から親の話を聞いたことないな。』


馬鹿姉貴だの糞姉貴だのはよく耳にする単語だ。
1日5回は軽く言っているだろう。


『まずあいつに親いんのか。
まぁ、いたから生まれてきたんだし。
じゃあ事故死、あるいは捜査官に殺られたか。』


自室へ戻る道、ブツブツと独り言をぼやく私はちょっとした不審者の類。
喰種って時点でよく思われてないけど。
幸い、ここには喰種しかいない。
好戦的な喰種ばかりだが、それなりに情は持ってるし、何より心配してくれる。

こんな幸福を、他にどこで味わえと言うのだろう。
十二分な幸せだ。



ーー*



ガタッと、備え付けの悪いドアが不吉な音を鳴らした。
案の定ドアの一部が欠けたらしい。
まあいい、タタラにでも直してもらおう。


「おかえり、遅かったんだねー。」


ほかほかと湯気を出しながら"私のベッド"に座るのは、紛れも無い美紅だ。
人の風呂に人のベッド、さらには人の部屋を使うこいつは生かしていいのかどうか。


『ただいま、あちょっとは遠慮を知れ。』


「えー?Aに遠慮なんているの?」


こいつ、死んでも知らねぇ。


『恨むんだったら自分の無能な脳みそを恨むだな。』


ゴスッと腹に響くような音を、美紅の頭と私の拳骨が発した。
美紅はベッドから落ちて悶絶、私は優雅にコーヒーを淹れる準備。
沙絢は窓の外をじぃーっと見つめ、うつらうつらとしていた。
眠いのに寝ないって、この子は本当に不思議な子だ。





.








.









夜の女子会、開幕。

15.距離→←13.強弱



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
15人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ロンリーアクエリアス(プロフ) - ぽぴいいいいいいいい!!!!!!! (2017年7月18日 13時) (レス) id: 1e3e402f09 (このIDを非表示/違反報告)
羊希(プロフ) - そうだぁ!! (2016年3月27日 13時) (レス) id: 316e3f7b35 (このIDを非表示/違反報告)
ロンリーアクエリアス(プロフ) - そうだそうだあ! (2016年3月24日 14時) (レス) id: 1e3e402f09 (このIDを非表示/違反報告)
皇シキ - 続きはいつになるです?早く、早くですよ!(^o^) (2016年3月22日 11時) (レス) id: ae9b578306 (このIDを非表示/違反報告)
夜宵(プロフ) - 『REVOLVER』を『YouTube』で検索!! (2016年2月26日 15時) (レス) id: 8c56ce6439 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雄飛 | 作成日時:2015年5月8日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。