夢の続きを追いかけて3 ページ42
【懐かしい顔ぶれ】
「かんぱーいっ」
気付けば季節は変わり11月になった。
今日は久し振りに青道高校野球部の同級生で集まって飲み会を開いている。
高校を卒業してからというもの在京メンバーは毎月のように集まっていたのだが、こうしてほぼ全員が集まることは滅多に無い。
今日は春から新社会人となる私達にはこうやって集まる時間が少なくなるというのと、今年のドラフトで私達の中からてっつんと、怪我があるもののそれを感じさせないプレーをするクリリン、それから大学で飛躍的に成長を遂げた光ちゃん……この3人が選ばれ、プロ入りすることになった。
そのお祝いも兼ねて、みんなで集まることが出来た。居酒屋の座敷に溢れんばかりの懐かしい顔ぶれが揃う。
「はぁ〜春から社会人かぁ〜……」
「Aはなれんの?社会人」
「……どうでしょうね」
グサリ、と亮介の言葉が胸に突き刺さる。公立高校の教員試験を東京と福岡の2ヶ所で受験をしたわけなのだが。
「まさかの全滅でしたからね……。私立で探すよー」
どちらも二次試験までは進んだのだがその結果は不合格。元より公立、私立には特に拘りを持っていなかったのだが、それでもショックだったし、実際結構焦っている。
「大人しく青道行ったらいいんじゃねぇの?誘われてんだろ?」
「そう、なんだけどねぇ…」
純の言うとおり、教育実習で青道にお世話になっていた時、理事長の娘でもある高島先生に、「春からうちに来ない?」と誘っていただいている。
私立はコネが多いとも聞くし、とても有難い話。なのだが……
「一也と約束したのになー……」
春から福岡に、それが一也との約束。ボソッとそう呟けば亮介の鉄槌が落ちてくる。
「ったぁ〜」
「馬鹿じゃない。そんなに一緒に居たいなら結婚すればいいじゃん」
「それは私の花嫁姿を早く見たいと言う……」
「ふざけてるならもう1回いっとこうか?」
頭を擦りながらそう話しているともう一度腕を上げられて大人しく正座をして話を聞く。
「指導者になって甲子園に行くのが夢じゃ無かったの」
「その通りでございます」
「だったら、夢のためなら、御幸だって分かってくれるでしょ」
「亮介ぇ……」
「あーもう汚いから寄り付かないで」
「まさかの汚物扱い!?」
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作者名:げび | 作成日時:2016年7月15日 22時