夢の続きを追いかけて ページ40
【数年後のお話】
「Aちゃんばいばーい」
「さようならでしょ!それから先生とお呼びなさい」
大学4年になった6月。私は教育実習で母校である青道にお世話になっている。
有り難いことに生徒達とも仲良くさせてもらっているのだが、なかなか先生と呼んでくれないのが少し寂しい。
「あ、もうこんな時間。私も失礼します、監督」
教育実習に来てからの1日は担当の先生について回って、授業を見学させてもらったり、逆に私の授業を見てもらってアドバイスを貰って…というような1日。
授業が終わってほとんどの生徒が帰ると部活の時間。やることが終わったら帰っても良いと言われているのだが、私は野球部の練習を手伝わせてもらってから帰っている。
いつものように練習を手伝って終わった頃にはすっかり日も暮れてしまっていたが今日は予定があるため急いで校門をくぐった。
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「ただいま!ごめん、遅くなった!!」
「おかえりー会いたかったよマイハニー」
「あれ、なんかいい匂いがする」
「……3ヶ月ぶりなのにスルー?」
「あはは、ごめん一也。お腹すいちゃってつい。」
玄関まで出迎えてくれた彼を無視して良い匂いのするリビングのほうへと向かおうとするも、立ち止まって抱き合う。
高校卒業後、ドラフトで福岡のチームに拾われた一也とは遠距離恋愛真っ只中。最後に会ったのは春先で、今回は交流戦期間でたまたま明日から東京で試合がある為に、移動日の今日は時間を作って会いに来てくれた。
ぎゅっと久しぶりに抱きついた体は以前に増して更に逞しくなっていて。会うたびにどんどん大きくなるなぁと実感する。
「いっただっきまーす」
「どーぞ」
テーブルに向かい合って座って両手を合わせて挨拶を済ませたあと、並んだ料理に順番に箸をつける。
「うんまぁ〜!!また料理の腕あがりましたなぁ」
「はっはっは、そりゃどーも。最近は料理してねーけどな」
「寮生活だもんねー」
「Aは練習してんだろ?本棚見ちゃった♡」
「まあ隠すつもりは無いけどさ……」
一也の言うとおり、今私は料理の勉強をしている。形から入る私は買ってきた料理本が沢山並んでいて、ついでに栄養バランスなんかもちゃんと勉強を始めた。なかなか上手くいかないけれど。
「肉じゃが食いたいなー」
「……練習します」
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作者名:げび | 作成日時:2016年7月15日 22時