【宮内啓介】トレーニング ページ38
「……んっ、はぁ、……もう、いい?」
「いや、まだだ」
「えー……もう無理ぃ……」
「諦めるな」
「いや、んフーじゃなくて……もう腕がプルプルしてるんだけど」
練習後、帰ろうとするAの首根っこを捕まえてウェイトルームに誘った。
ほとんど強制的になってしまっているが、文句を言いながらもちゃんと一生懸命やる姿を腕を組んで見守る。
「ふぁー!もう無理!!」
「1分休憩したらもう1セットだ」
「うぇ!?宮ちゃんいつもこんなのやってんの……」
「体が基本だからな。Aももう少し筋肉を……」
「私女の子だからそこのとこ考慮してね?」
「よし、1分経ったぞ」
「………鬼」
・
・
・
「はー!疲れた!!」
「よし、それじゃあこれを…」
ふぅ、とタオルで汗を拭いながらベンチに腰掛ける彼女にオリジナルのプロテインを差し出す。
「あ、うん、ありがとう。後で飲むわ」
「ダメだ。運動後30分以内が効果的だからな、すぐに飲んどけ。」
んフーと鼻息荒くそう言うと眉を寄せてゆっくりと飲み干し、ぷはーっと大きく息を吐くA。
「それからこれ、トレーニングメニュー。考えといた。3日に1回はやっとけ」
「……」
「ショートは肩の強さも必要だし、堅実な守備には足腰の強さも必要だと思うが?」
「…はーい、頑張ります」
数ヶ月後
「宮ちゃん宮ちゃん!!」
練習後、もう少し投げたいという丹波に付き合ってプルペンへと行こうとしたところAに声を掛けられる。
「ね、最近送球良くなったと思わない?」
「誰の?」
「Aに決まってるでしょーが!!走るのも早くなったというか、なんか宮ちゃんに言われたトレーニングしてから体が軽い気がするんだよねー」
「それは良かったな」
「ただ1つ問題が……」
先程までニコニコと浮かべていた笑顔が段々雲っていき、下を向いて両手を胸に当てる。
「……なんか、小さくなった気がするんだよね」
「……は?」
俺の声に隣で黙って会話を聞いていた丹波の声が被さる。
「いや、だからね、多分胸筋鍛えてるからだと思うんだけど」
「丹波、行こう」
「え、あ、あぁ…」
「ちょっと!宮ちゃん!話終わってない!!」
これ以上話を聞いていてはいけない、そう肌で感じ取った俺は踵を返し、本来の目的地であるプルペンへと向かった。
後ろから「宮ちゃん呪うからなー!」なんて聞こえたが聞こえないふりをした。
45人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:げび | 作成日時:2016年7月15日 22時