【伊佐敷純】少女漫画 ページ4
「じゅーん！！次！早く読んでよー！続き気になる」
「うるせぇ！今いいとこだ！！」
練習が終わり、自主練も終わり、皆思い思いに過ごす時間。
俺はこうして少女漫画を自室で読むことが多々あるのだが、たまに、こうやって彼女が参加してくることがある。
「あーもうキュンキュンする……やばい」
「顔緩んでんぞ」
「仕方ないじゃん！俺様とかやばい！」
ニヤニヤと口を緩ませながら漫画に目をやる彼女に一言突っ込んでやる。
「いやでも俺はそっちじゃなくてこの幼馴染みくんのほうが…」
「わかる！絶対こっち選んだほうが主人公は幸せになれるよね〜」
今読んでいる話は普通の女子高生がとあることをキッカケに学園１のイケメンと言われる俺様男に気に入られ、自分も気付いたら惹かれていって…という話。
その中に主人公の幼馴染みの男の子が出てくるのだが、彼もまた幼い頃から主人公のことが好きで…という王道な三角関係を描いた作品だ。
「ほら、ここ幼馴染みくんが初めて見せた男の顔！ここ！ここのシーンよくない？」
「あー、たしかに良いシーンだよな」
「『純子…、アイツのこと好きなのか？』」
「は、なんだよ純子って。まさか俺のことじゃねぇだろうな？」
急に漫画の台詞の主人公の名前を『純子』だなんて変えて台詞を読み出すA。
「『なあ、こっちみろよ』」
「なっ…」
台詞に合わせて漫画と同じように顎に手を添え、自分の方を向かせるA
「ちょ、Aちけーよ！！」
この後漫画では思いを伝えた幼馴染みくんが主人公にキスをして、目に涙を浮かべた主人公が幼馴染みくんの頬を叩いて走り去る…というシーンだ。
まさか、な…
「『俺、ずっと純子のこと好きだった。俺じゃ…ダメか？』」
ゆっくりとAの顔が近付いてくる。
「な、おい！A！！」
パッと俺は彼女の肩を掴んで止める。
「……あはは、純顔真っ赤！！」
「るせぇ！！てめー調子乗ってんじゃねぇぞ！」
コツンと頭を軽く叩く
「あただ、いやーでも良いものが見れましたわ♡」
「今すぐ忘れろ！」
「ふふふ、それじゃそろそろ帰るね、また明日ー」
「さっさと帰りやがれ！気を付けてな！」
そう言って彼女が帰った後も暫く顔の熱が引くことは無かった。
「くっそ、全然集中できねぇ」
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作者名：げび | 作成日時：2016年7月15日 22時
