【結城哲也】第一印象 ページ20
【3年生が入部したての頃のお話です。】
「隣、いいか?」
「どーぞどーぞ」
初日のお昼ご飯。こんもりと盛られた丼とおかずが載ったお盆を持って空いてる席へとつく。
たまたま空いていた場所は青道野球部初の女性部員(仮)の隣だった。
確か名前は……
名前……
「……A」
「……はいっ!?」
俺の一言にバッと顔を此方に向ける彼女は驚きと興奮を隠せないようだった。
「……すまない、間違っていたか?」
「ううん、合ってる!自己紹介でちゃんとAって呼んでって言った!でも誰も呼んでくれないし、まさかここで呼んで貰えるとは思ってなくてビックリしちゃった。」
「良かった。実は名前までは思い出せないんだ…すまない」
「あはは、いーよいーよ!AA!Aって呼んでくれたらそれでいーよ、てっつん!」
「……てっつん?」
「えーっと、結城哲也くんだよね?だからてっつん!あだ名だよー」
「あだ名なんて初めてつけられたな」
不思議と悪い気はしない。
「Aはどうしてここに?」
「甲子園行きたいからさっ、みんな同じでしょ?ね、まっすー」
そう話しかける先、彼女の向かい側にはガツガツとご飯をかきこむ丸い男…増子透がいた。
「まっすー……Aはあだ名をつけるのがうまいな」
「ありがと!……ここだけの話、ご飯だけはどうしてもキツくてさ、まっすーに朝から手伝って貰ってんだ」
「まだまだ食えるぞ!」
ナイショね、と笑顔を浮かべるAのことをもう少し知りたいと思った。
その日の夜、俺は青道に来ると決めた時から1日500スイングをノルマに掲げていた為、バットを持って外へ出る。
ここで振ろうと決めていたスペースに向かうと先客がいた。
「……あれ、てっつん。まだ帰って無かったの?確か通いだったよね?」
「A……それはこっちの台詞だ」
いつから振っていたのか汗を拭いながら俺を見る彼女。
「あはは、そりゃそーだね。でもこれくらいしないとさ、やっぱりついてくのしんどいから」
「……俺も、一緒に振っていいか?」
「もっちろん!」
「それから、もうひとつ……今度、守備を教えてほしい」
「私に?」
「あぁ、頼めないだろうか?」
「うん、一緒に練習しよう」
こうして夜は一緒に練習をして、一緒に帰ることが多くなった。
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作者名:げび | 作成日時:2016年7月15日 22時