【倉持洋一】鼻血 ページ17
夏の暑い日。
ノックを受けている最中。前で打球に備えるAさんを見て、いつもこの人すげー腰低く構えるんだよなぁ……なんて思いながら見ていた時のこと。
つーっと何かが鼻から垂れた感覚がして、グローブをしてない方の手でこすってみると赤い血が手についた。
「うわ、鼻血出た」
「え？」
振り返ったAさんが俺の顔を見てぎょっとした。
「ちょ、タイム！！」
「あーいいっすいいっす。その内止まるんで。」
鼻血出た時ってどうすんだっけ、と思いながら垂れないように上を向く。
「あー！ダメダメ！鼻つまんで軽く下向いて」
「え、あ、はい」
俺はAさんの言うとおりに鼻をつまんでうつむいた。
「何、倉持、鼻血？頭叩いたら止まるんじゃない？」
「亮介！ダメ！手引っ込めて！」
「つまらないね」
顔をあげることができないが二人の会話で亮さんが俺にいつものようにチョップをしようとしていたことを察する。
「そのままベンチに行こうか。日影に入ったほうがいいよ」
言われるがままベンチに向かって歩く。
「くっすーん！代わりにショート入っててー」
「はいよー！」
よく通る楠木先輩の声が聞こえたかと思うと暫くしてノックが再開された。
「はい、ティッシュと氷のう」
「有難うふっこ！はい、洋ちゃん。これで鼻を冷やして。ティッシュは詰めてもどっちでもいいけど……」
「……いつも思ってましたけどAさんってこういう処置とかマッサージとか、ちゃんと勉強してるんすね」
「まあね！見直した？見直した？」
「ヒャハハ、あんま調子に乗らないほうがいいっすよ。でもま、助かりました。有難うございます」
「あはは、それじゃあ先に練習戻るねー」
程なくして鼻血も無事に止まり、練習後もう一度Aさんにお礼を言っておこうと姿を探していたとき。
「倉持……」
神妙な顔をした御幸が近付いてきた。
「……Aに興奮して鼻血出したってまじかよ？」
「はあ！？鼻血出したのは本当だけど別にそんなんじゃ……」
そういやコイツはあの時ブルペンにいたっけか。
「倉持がAの尻見て急に鼻血出してたって亮さんが…」
「確かに後ろから見てたけど断じて尻じゃねぇ！！興味ねぇし！！」
「てめ、Aの尻に魅力感じねぇのかよ！！」
「なんだよお前めんどくせーな！」
結局御幸を説得するのに時間が掛かってお礼は言えず終いだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：げび | 作成日時：2016年7月15日 22時
