#043 ページ45
【御幸side】
「みゆきんぐ……?」
「先輩……、先輩の野球に対する思いってそんなもんだったんすか?
入部した時、監督に認められる為にすっげー一生懸命だったって聞きましたけど。
もう青道で野球したいって気持ちは無いんすか?」
「……あるよ、あの頃から気持ちは変わってない。
でも、」
「じゃあ、気にすることなんて何も無いんじゃないですか?」
俺は先輩の言葉を遮ると片膝をついて先輩と向かい合う。
「先輩は今のままでいいんですよ。
確かに試合には出ることは出来ないですけど、気持ちは同じグラウンドに立ってるでしょ。それは先輩達にも伝わってると思います。
自信なんて皆無いですよ。でも一生懸命やるしかないじゃないですか。
俺も、先輩も、皆誰かに決められたわけじゃなく、自分で選んでここで野球してるわけですし。
野球をもうしくないって言うなら止めないですけど、そんなこと考える必要なんて無いんじゃないですか?
A先輩、まだ野球やりたいですよね?
俺もこれからもずっとA先輩と野球したいです。」
そう思ってることを伝えるとA先輩の目から涙が零れる。
「……ありがとう、みゆきんぐ」
そっと手を頬に添えて涙を親指で軽く拭う。
「……こんな時に言うのもあれなんですけど……
俺、A先輩のこと、好きです。
いきなりだし、今は返事はいりません。これからアピールしていくつもりなんで。」
「え……」
「コラァ!!Aー!!!お前監督にマネージャーに転向するだとかなんとか言ったらしいじゃねーかー!!」
戸惑いながら何かを言おうとする先輩の声を遮って、純さんの声が響く。
「うるさいぞ、純。もう夜なんだから大きな声は出すな。」
「あれ、御幸も一緒?もしかしてお邪魔だったかな?」
「ヒャハハ、こんなところで何やってたんすかー?」
純さんに続いて哲さん、亮さん、増子さん、丹波さん、宮さん、クリス先輩……と三年のメンバーが揃う中、何故か倉持も着いてきている。
「……で、マネージャーに転向するというのは本当か?」
「俺は認めねーからな」
「Aちゃんは選手のままが一番だ」
「何かあったのか?」
先輩達は口々に心配そうに言葉を発する。
「あはは、そう思ってたけどもうやめた!
今まで通り選手としてやってくからみんな宜しく!」
返答を聞いた先輩達は不思議そうにしていたが、A先輩は明るい表情をしていた。
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作者名:げび | 作成日時:2016年6月6日 11時