#033 ページ35
【倉持side】
「……放課後、A先輩誘って出かけようと思うんだけど」
「――は？」
休み時間、わざわざ呼び出してきた癖に相変わらず自分の席でスコアブックに目を落としていた御幸が唐突に口を開く。
ちなみに夏合宿が終わり、大会に向けて調整へと入っている中、試験が近いという事もあり今日の部活は休みとなっている。
「それってどうゆう――」
「いや、別にそういうんじゃないんだけど。倉持には言っておこうと思って」
そう言う御幸は悪戯な笑みを浮かべる。
相変わらず食えないヤツ……
「ま、いいんじゃね？」
「ん、じゃあ誘ってみるわ」
――「あ、いたいた！もっちっちーみゆきんぐー！！」
ナイスなタイミングで現れる先輩は手を振りながら此方へと近づいてくる。
「どうしたんすか」
「いやーさっき監督の授業だったんだけどプリント配ってくるように頼まれちゃって……。
もっちっちのクラスに行ったらいないしさー、本当仲良しだねお二人さん」
ニコニコと笑顔を浮かべる先輩からプリントを受け取る。
「これ１年生の分なんだけど、あとお願いしてもいい？」
「あーいいっすよ」
「ありがとー！助かる！！」
それじゃあ―と帰ろうとする先輩を御幸が引き止める。
「――A先輩、今日放課後予定あります？」
「ん？今日？あー…うん……」
御幸の質問に煮え切らない返事をする先輩。
「ヒャハ、残念だったな御幸」
「あ、もしかして練習？遅くなっても良ければ付き合うよー。
亮介と映画見に行くだけだからさ」
「「え、亮さんと！？」」
思わぬ答えに俺と御幸の声がハモる。
「そうなんだよねー。この時期だし絶対ホラーだよ……はあ……」
「ホラー苦手なんすか？」
「超苦手！！でもテスト前だからさあ、ノート借りたのよ…
そしたらお礼に付き合えって言われて断れなくて……
あーやだやだもう今から怖い！！ホラーも亮介も怖い！！」
そう言いながら先輩は自分の教室へと帰って行った。
「……亮さんとデートだってよ、どうすんだ御幸」
「はは、まさか亮さんに先越されるとはなー……ま、また考えるわ」
ま、御幸も亮さんには敵わねぇよな……と少し安心すると俺も自分の教室へ戻る。
「…ん？なんで俺少し安心してんだ？」
そんな疑問がよぎったが深く考えないことにした。
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作者名：げび | 作成日時：2016年6月6日 11時
