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#029 ページ30

【御幸side】


体育祭終了後、たまたま礼ちゃんに出会った。



「あら、御幸くん。お疲れ様。」



「礼ちゃんも……ってなんもしてないか。」



「失礼ね、教師は教師で色々と忙しいのよ」



そういう礼ちゃんはいつもと同じようにスーツ姿で、どうみても体育祭に参加していた様子は無かった。


「あ、そういえばちょっと聞きたいんだけど、A先輩のお兄さんの幸平さんって礼ちゃん知ってる?」



「Aさんのお兄さん?」



「うん、昼間会ってさ、『本当は俺がここにくるはずだった』って言ってたから。礼ちゃんなら何か知ってるんじゃないかと思って……」



「……ええ、知ってるわ。なんせA幸平くんは私がスカウトしてた子の一人だから。


高い守備力を持ち、長打力もある魅力的な選手だったわ。


私が初めて声を掛けたのは彼が2年生の頃で、その頃から高校は青道に行くって言ってくれてたんだけど……。


彼は結局うちには来てくれなかった。詳しい理由は私も知らないけれどただ『野球はもうしないから』とだけ言っていたわ。」












「……って礼ちゃんから聞きました。


で、俺の思い違いかも知れないんですけど、幸平さんが野球をしなくなったのとA先輩が青道に来た理由って何か関係があるんじゃないかなと思って。


まあ言いたくないっていうなら無理には聞かないですけど……。」


「興味深い話だね。入部した時、理由を聞いたらAは甲子園を目指す為だって言い張ってたけど……他に理由があったの?」


「う……、甲子園目指したいってのは本当の話だよ。」


「大体双子のにーちゃんがいた話も初耳だったしなあ?この際だから詳しく聞かせてもらおうか」



「そうだな、俺も気になる」


俺の問いかけにあまり話したくなさそうにしていたA先輩だったが亮さんや純さん達にもそう言われ、諦めたのか箸を置くと小さく溜息をついて話を始めた。

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作者名:げび | 作成日時:2016年6月6日 11時

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