#015 ページ16
【中嶋side】
なんだか面倒なことになってしまった。
一般入学ではあるもののそれなりに野球を続けて来て、それなりに高校野球というものに夢を見て、此処青道野球部を選んだ。
いざ入部してみたらなんか知らないけど女の部員はいるし、しかもなんか凄い周りの人にも可愛がられてるようで。
ちょっと先輩の前で本音を漏らしてしまったら、こんな訳のわからないことに付き合わされるハメになってしまった。
「………はあ」
大きく溜息をつく。
「なかじー、はじめるよー!
キヨさーん!お願いしまーす!!」
なんだよなかじーって。勝手にあだ名つけてんじゃねーよ。
……まあ、二人で20球……一人当たり10球程度、すぐに終わるだろう。
ついでに俺の守備をこの先輩達に見せつけるチャンスでもあるし、軽く終わらせますか。
隣でA先輩がセカンドベース寄りの打球を捕球しにくるのを確認しながら、ベースカバーに入る。
「なかじー!」
ポロッ
「え」
名前を呼ばれながら投げられるボールを弾いて落としてしまう。
「……す、すみません。」
しまった……、油断し過ぎた。
「どんまいどんまいー!送球強かった?でもこれくらいで次も投げるからねー!」
彼女はそう言いながら俺に笑顔を向けてくる。
「さあ、仕切り直して一球目ー!」
次は送球を上手く受け止め、難なく一塁にも送球することに成功する。
「なかじーナイスー!!さあ、二球目くるよー!」
ただボールを受け取って投げただけで一体なんなんだ。
そう思っていると今度は一塁ベース寄りに打球が飛んで来る。
「くっ……」
少し反応が遅れてなんとか打球には追い付いたもののそのまま体制を崩し送球が間に合わない。
「今のは打球への反応が遅れちゃったねー。さあ、もう一本ー!」
・
・
・
それからというもの際どい打球を捕り逃したり、送球が逸れてしまったり……ほとんど俺のミスで何度も何度も一球目からやり直しになってしまう。
「くそっ!!」
20球など直ぐだと思っていたのに予想に反して辺りはどんどん暗くなっていく。
(なんで終わんねーんだよ……)
(なんであの人よりもミスしてしまうんだ……)
モヤモヤしながら顔を滴る汗をぬぐう。
「キヨさんちょっとタイムー!!」
そう言うとA先輩がこっちへと駆け寄ってくる。
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作者名:げび | 作成日時:2016年6月6日 11時