#013 ページ14
【伊佐敷side】
「よし、今日の練習はここまで!各自でクールダウンをすること!」
監督の言葉を聞き、各々動き始める中、俺は哲の元へと向かう。
「哲、ちょっとバッティング付き合ってくんねーか?」
「ああ、いいぞ。」
2つ返事で返してくれた哲と一緒に準備をしていると後ろから声が聞こえる。
「――女だからって贔屓されてんじゃねーの。」
最初は黙って聞いていたがこの言葉にカッとなった俺は思わずソイツの胸ぐらを掴みあげていた。
「オイ!!今のどう意味だコラァ!!」
「今の言葉は聞き捨てならないね」
いつの間にか亮介も隣に来ていて、彼の顔からはいつもの笑顔が消えていた。
仲間が怪我したのを見てそりゃいーや?
女だからって贔屓されてる?
「ふざけたことぬかしてんじゃねぇぞコラァ!!」
「じゅーんじゅんっ!」
怯えた顔でこっちを見ている相手にもう一度怒りを言葉に乗せてぶつけてやると急に背中に重みを感じて胸ぐらを掴んでいた手を離す。
「なっ……A!?なんでここに……」
「もー、純ちゃん!みんなも!後輩いじめちゃダメでしょー」
振り向くとここにいるはずはないと思っていた話題の人物がいた。
「いじめてるとかじゃなくてコイツらがお前のこと……」
「……そんな怖い顔しなくても大丈夫。ちゃんと分かってるから」
ねっ、と笑顔を向けてくるAを見て何も言えなくなる。
「えーっと、君、名前とポジション教えて?」
「……中嶋です。ポジションは内野ならどこでも……」
「よし、なかじー!今からノック付き合ってよ!」
「「「「「………は?」」」」」
その場にいた全員が唖然とする。
「ノックって……A怪我してるじゃん。」
最初に口を開いたのは亮介だった。
「んー、まあ腫れは退いたし……テーピングで固めたらなんとかなりそう」
そう言いながら足を曲げ伸ばししてみせるA。
「怪我をしているのに無理に動かすのは良くないぞ。」
「哲さんの言うとおり、ただの捻挫だってなめてたら癖になりますよ。」
いつの間にか輪の中に入っていた御幸が続く。
「分かってるけど……」
「ええやないか!そういうことやったら特別に俺がノック打ったるわ!!!」
そう大声を張り上げてきたのは東さんだった。
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作者名:げび | 作成日時:2016年6月6日 11時