四十四話 やっと笑ったな… ページ45
そうこうしていると
彼らは目的の鍛冶屋に着き
各自で刀を見比べることになった。
Aは、その一本一本を手に取り
陽光に当てるなどして
真剣に品質の良し悪しを見極めている。
その表情はとても穏やかだ。
A「うむ、ここの職人は
大変良い腕をしている…」
彼女は刀が好きだ。
悪人がそれを使えば
あっという間に人殺しの道具になってしまう。
けれども──…
いざというときに
守りたいものを守る術となり、力となる。
言うなれば、刀とは己の行く道を照らす
道しるべなのだとAは思う。
丁寧に糸を編まれた柄や、
素朴な装飾の施された鍔(つば)から
美しく波を打つ波紋に至るまで
その全てに奥深い美徳がある。
だからこそ、
そんな刀がAは好きなのだ。
平助「なんかAって一くんみたいだな」
A「俺が斎藤に……?」
彼女が首をかしげると、
より踏み込んで説明するように
平助は腕を前で組みながら言葉を続けた。
平助「おうっ!一くんも
刀のことになると目の色変えるんだぜ?
普段はあんなに無口なのに刀の話すると
止まらねーし……ほんっと笑っちまうぜ!」
幹部や周りの隊士達は
すでに知っていることだが、
屯所に来てまだ日の浅いAが
そんなことを知るわけもなく、
平助は少し得意気にそう語る。
しかも話の内容が内容ゆえに
自然と笑顔が浮かんでくる。
すると──…
そんな彼の表情を見て
Aも微かに口元を緩めて
小さく安堵のため息をこぼした。
A「やっと、笑ったな……」
平助「え?なに?」
彼女の言っている意味が分からず
反射的に聞き返す。
A「俺に同行すると決まってから
ため息ばかりついていただろ?
大方、藤堂は俺と居るのが億劫なのだろう」
平助「あ、いや…まあ……」
痛いところを突かれて上手く言い訳ができず、
目線をあちこちに交差させながら
結局は無言の肯定をする。
すると──…
A「すまない…」
どこか悲しげな表情で
ぎこちない笑みを浮かべ小さく謝罪した。
**********
続く
ラッキー人物
藤堂平助 祭りに行ったら、手をつないで一緒に楽しんじゃお☆
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亜紀野ユキ(プロフ) - 彩豊さん» ありがとうございます(*´ー`*) (2022年10月26日 14時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
彩豊(プロフ) - こんにちは!凄くおもしろかったです!これからどんな展開になるか気になります_:(´ཀ`」 ∠):更新頑張ってください!応援してます☆彡 (2022年10月21日 19時) (レス) @page50 id: 72022c3b56 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 綵河さん» 薫くん良いですよね~♪僕も薫くんの生意気そうで寂しがり屋なところが愛らしいと思っています!!!!この小説でも早く登場させたいと思ってます!!!!!! (2016年8月10日 16時) (レス) id: f4bec4ec63 (このIDを非表示/違反報告)
綵河 - もっとたくさん薄桜鬼シリーズを書いてくれると読む気がわいてきます!ちなみに私は【南雲薫】の占いツクールを書いてくれると嬉しいです♪♪ (2014年3月31日 9時) (レス) id: 6ae65de84b (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 玲名さん» お世辞でも嬉しいです!!僕はとにかく小説を書くとき、いつも読者様たちの立場になったつもりで「どう書けば伝わるか」を考えながら書いています♪とはいっても、僕より素晴らしい作者様たちはたくさんいますが… (2013年12月16日 21時) (レス) id: 806d6ba1fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2013年2月3日 22時