第五百十六話 慈悲を拒む者 ページ12
肩を落とした様子のかすみの背中をぽんっと叩き、彼女を励ます。かすみは涙目になりながら「はい…」と弱々しい返事をした。
___さっきの様子じゃ、このシャドウに物理属性は効かないのかも。
態勢が整っていない相手とはいえ、攻撃をされるとなると多少は身構えるはず。だが対峙しているシャドウにそういった様子は一切見られなかった。まるで自分にその攻撃は通じない。攻撃をしたければすればいい、と言っているかのような。そんな余裕の空気を感じた。
「クロウ、どう思う?私、物理攻撃は避けた方がいいと思うんだけど」
「僕も同じ考えだ。それに奴らには弱点がなさそうに思える」
弱点がない敵。今までに何度も戦ってきたことはあるが、これが中々厄介。戦い慣れしている怪盗団ですら手を焼く相手だ。だが対処法はある。
「なら、俺の出番だな」
「だね。ジョーカー」
___弱点がないのなら、眠らせて無防備にすればいい。
「ラウール!」
ファントムショーにより、二体の敵を眠りにつかせる。睡眠状態。これ以上に敵が無防備になり、どんな攻撃も致命傷になる状態はない。
「ペルソナァ!!」
ロキのメギドラオン。当たり一体を吹き飛ばすような強大な力によって敵は態勢を崩す。残す体力もあと僅か。そこに総攻撃を仕掛ける。動きに鈍りのあるかすみのカバーをしながらも、リティは的確に敵の急所を狙って剣を振るう。
「俺の邪魔をするからだ」
クロウがその目を赤く不気味に光らせ、すっかり弱りきった様子のシャドウに言い放つ。その隣でかすみが苦しそうに息をあげていた。
「はぁっ…はぁっ…」
「愚かな…主の慈悲を拒む者…ならば見るがいい…」
その言葉を最後に言い残し、シャドウは塵となった。見るがいい、それはかつて映像が突然目の前に現れた時のように、何かがあるということを暗示していた。
「今度は何を…!?」
その時、黄色い歓声が背後から聞こえてきた。今この場には自分たち以外、誰もいないはず。なら一体、誰の声だろう。とリティたちは振り返る。
「お聞きください。この大歓声!新体操界のニューヒロイン誕生に、割れんばかりの歓声です!」
突然の状況に自体を受け入れきれていないのは全員に一致していた。だがこの場で誰よりも、その状況を受け入れきれずにいたのは間違いなく彼女だった。
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね!いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜!!すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(?)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみれ | 作成日時:2024年1月10日 17時