家族と相棒 ページ11
侑李サイド
有岡先生「あとちょっとだな」
涼介「そうだね」
病室には、涼介と大ちゃん先生と僕。
時計の針は9時40分を指していた。
退院の予定は10時だから、この病室にいるのはあと少しだけ。
窓の外を見ると、暗闇の中にいくつかの小さな明かりが灯っている。
普通、退院は午前中にするものらしいけど、伊野ちゃん先生を待っていないといけない僕は、夜に退院するんだ。
有岡先生「また来いよ。勉強、わかんなくなったら教えてやるから」
侑李「うん、ありがと」
有岡先生「それと、部活入るんだろ? 試合とか呼んで」
侑李「呼ぶよ、ちゃんと」
試合に出られるかはわからないけど、もし出られた場合、お世話になった人にはちゃんと日程を伝えるつもりだ。
涼介「準備できてる? 忘れ物とかない?」
侑李「たぶんない。あっても明日取りに来る」
涼介「ダメだよ、そんなテキトーなの。ちゃんとしなよ」
侑李「いいもん、どうせ明日も来るからね」
僕がそう言うと、涼介は「……ったく」と言いながらそっぽを向く。
顔は見えないからわからないけど、どうせ真っ赤になっているに決まってる。
耳が真っ赤だからね。
大ちゃん先生がクスクスと笑うから、涼介の耳がもっと赤くなった。
そのとき、ガンガンと激しいノックの音が病院に響きわたり、大ちゃん先生の笑い声がぴくりと止まる。
涼介「は、はい……」
涼介も若干ひいているように感じる。
侑李「はーい」
僕が大きな声で返事をすると、ものすごい勢いで扉が開き、「ヤッホー」とハイテンションな伊野ちゃん先生が現れた。
伊野尾先生「準備できてる? 行こっか、俺んち」
侑李「うん!」
伊野ちゃん先生の私服を見るのは初めてで、ガシッとした服装が少しかっこいいな、と思った。
涼介「伊野尾先生、そんな服着るの?」
伊野尾先生「まぁ、いろいろ着るけど」
涼介は「へぇー」と言いながら、伊野尾先生をまじまじと見る。
伊野尾先生「早く行くぞ、侑李」
侑李「あ、はい、もう行けるよ!」
僕は急いでリュックを背負って、敬礼のようなポーズをする。
涼介「じゃあね、侑李」
侑李「うん、明日来るから」
涼介「今日も好きだよ」
侑李「明日も好きだよ」
最後に僕たちの合言葉を言う。
いつもならここで終わりなのに、涼介は続けた。
涼介「明後日も好きだよ」
侑李「じゃあ僕は……永遠に好きだよ」
僕がそう言うと、涼介は「反則だろ、それ」と笑った。
僕も笑ってから、病室を出た。
183人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:J | 作成日時:2020年5月20日 11時