雪がお好きな貴方には ページ4
貴方side
時は雪の大きさが荒めになる、12月中旬。
「っはぁ〜、寒いですね。こんな日はこたつでみかんを食べるのが良いです」
ボサバサ降る雪が屋上を白に染めて行く。厚い雲で太陽が見えないため、積もる一方だ。
「……こたつ、か。良いものかい、それは」
「え、赤司さん知らないの!?凄く温まって、ぬくぬくするのです。」
ふふっ、と手袋で覆われた手を口元にやって笑う。
「……かなり積もって来ましたね、こんなに積もっているなら、雪だるまが作れます。」
作ってみます?、と聞くとまた今度、とはにかんだ。そんな彼の表情に、キュンとしたのは内緒です。
「冬って、私好きなんです」
「へぇ、なんで」
「冬が好きっていうより、雪がすきなのかな。しんしんと、静かに、儚く降るのが好き。寂しい感じが好き。……けど、」
「なんでかな、雪を見ると、怖いんです。私も、こんな風にいつかは冷たい心を持ってしまうんじゃないかって、怖くて怖くて、怖くて。」
ふぅっ、と息を吐いてみる。
相変わらず、白い、白い息だった。
「……そう」
なんとも言えない声音で、赤司さんは呟いた。
一人ごととも思えるような、小さな小さな声で、言ったのだった。
しばらくの沈黙の後、静かに彼は抱きついてきた。
当然、男に免疫がない私は、どうしたら良いかとあたふたした。
それでも振りほどけなかったのは、
彼が、とてもとても小さく見えたから。
「……ねぇ、A」
「なんですか」
「びっくりした?」
「ええ、しましたよ」
「なんで振りほどかないの?」
「………気まぐれですよ」
………私はまた、気持ちを隠し、嘘をついた。
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作者名:白井由紀 | 作成日時:2017年12月23日 13時