▽ ページ33
＿安心したのが、悪かったのだろうか。
誰かが、罠にかかり、後ろで爆発が起こった。
後ろに居た筈の兵士達は無残にも吹き飛び、物言わぬ肉塊と成り果てていく。
「＿っ、」
見慣れた筈の光景に、思わず息を呑んだ。
たった一瞬、爆発で怯んだたった一瞬で、敵に取り囲まれた。
(まずいな...。)
明らかに劣勢。
直撃していないだけマシだが、爆発の影響は受けている訳で、右足からは、熱い液体が流れ出ていた。
何とか攻撃を躱して、相手を倒していくが、度重なる戦闘による疲労は半端じゃない。
息も上がり、剣を握る手にも、力が入りにくくなってしまった。
「っ＿＿なかむ！」
誰かが俺を呼んだ。
それは、聞きなれた彼の声で。
後ろを振り向けば、剣を振り下ろした敵兵の姿。
思わず、目を瞑った。
激しい痛みが来るだろうと思っていたのに、それはいつまで経っても来なくて。
恐る恐る目を開けると、目の前には、見慣れた青色。
彼の体からは、彼とは正反対の紅が、大量に吹き出していた。
「＿きんと...っ、」
慌てて彼に近寄ろうとしても、敵はそれをさせてはくれない。
ダメ、だめ、駄目。
死なせない、死なせたくない。
「な、かむ、い、から...、」
良くない。
まだ、だって、いっぱい、
「逃げろ、よ、」
「絶対に嫌だ！！！」
きんときを置いて行くなんて、絶対にしたくない。
だって、まだ、いっぱいあるんだ。
話したい事、いっぱいある。
伝えたい事、いっぱいある。
君と2人で行きたい所、いっぱいある。
君に言って欲しい言葉も、いっぱい。
「んで、だよ...。バカやろぉ...。」
なんで？そんなの、
「好きだからに、決まってるじゃん...！」
...彼の言葉は、もう聞こえなかった。
全ての兵士を捌いた後、辺りは紅1色に染まっていた。
どれが彼の血なのか、分からないほどに。
疲れ切った足に鞭を打って、半ば倒れ込むように、彼に触れた。
彼の体は、温かかった。
けれど、それは明らかに人の体温とは掛け離れていて。
彼が、もうここには居ない事を、いとも簡単に示して見せた。
分かっている。
分かっているけど、理解は出来なくて。
...氷みたいに冷たかったなら、諦めもついたかも知れないのに。
「っ、ぁぁああああああああああ！」
敵をおびき寄せるとか、そんな事、考えもせずに泣き叫んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 287人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ローゼ | 作成日時：2019年4月14日 22時
