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雨が柔らかい地面に、硬いコンクリートに殴り着ける音が厚い壁をすり抜けて伝わってくる。
きっと、大きな雨粒なんだろう。こんな雨の中飛び出して行った出久は大丈夫なのかな。そう考えると気が気じゃなかった。
『そんな訳無いでしょう』
＿＿＿？
意図せず開いた口に思わず手をやる。今、私が話したの？
『ほら、足音が近づいてくる。早くこんな悪夢から目を覚まさないと』
口が勝手にペラペラ動く。話しているのは紛れもない【私】なのに、考えても無いことが口を走るのはとても妙な気分だ。
その言葉の通り、水を弾く音が段々と近づいてくる。誰かがこちらへ向かって居るような…。
『誰かが来ても声を出しちゃダメだよ』
「………」
出久の言いつけ通りぎゅっと固く口を結んでその場をやり過ごそうとした。
『早く声をあげてしまいなさい』。頭の中に流れる声にさらに困惑しながら、もう黙ってと心の中でひたすらに念じる。
やがて足音はついにこの小さな箱のような建物の前で止まってしまった。
「…おい」
聞き覚えのある声に背筋を凍らせる。
わずか数十秒の出来事なのに、私には長い映画を見ているような、半現実的なクラクラする感覚に陥った。ああ、なんだか目眩がする。
好きだよ愛してくれると笑ってくれた出久を裏切りたくない。声は出さない。見つかりたくない。ずっと2人で、そう永遠に。…本当に？本当にそう？あの狂った2人だけの小さな箱の中で幸せになって絆されて。それで本当に良いの？
「…っ」
声にならない叫びが私の喉を通らない内に頭を枕へ押し当てた。
「いんのか、A」
ああ、答えてはいけない。口が震えて開こうとするのを必死で両手で抑えた。もう何がなんだか分からない。
「…んでお前がこんなとこに居るって思ったのか、正直わかんねぇ。どぉでもいいクソモブ以下のお前に執着なんて…ねぇと思ってた。お前がどこでいつ野垂れ死のうが関係ねぇ…ムカつくが、それを撤回してやる」
「俺は俺なりに償う必要があんだよ」
悲しげな音を孕む声が雨のしっとりとした雰囲気にのせられ、私の耳へと伝わった。普段の勝気な彼とは想像もつかないほどの泣きそうな声に…気づけば口を開いていた。
『助けて』。
＊＊＊＊
この瞬間この時だけは、ヒーローになれないことを約束された男が、一人の少女のヒーローになった話。
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トオ(プロフ) - あの、もう一気読みしました…好きすぎて……こんな作品作れるなんて凄くないですか？めちゃくちゃ尊敬してます… (2022年8月21日 10時) (
レス) @page18 id: 316392659a (このIDを非表示/違反報告)
43yomi1(プロフ) - あ、滅茶苦茶好きです…！ (2021年4月18日 5時) (レス) id: 674eb44c7b (このIDを非表示/違反報告)
*紅_あか* - わわわ！わー！！好きです！！！すっごい好きです！！！！あの…なんて言うんだろう…表現の仕方？とストーリーと夢主の思考？を行動に写して、わくわく(…かな？)してしまうほど好きです！！！！！ (2021年4月8日 20時) (レス) id: d344c61285 (このIDを非表示/違反報告)
春風 恋(プロフ) - みかさん» ひゃーっっ、ありがとうございます！！皆さんへどんでん返しできたかな？とニマニマしながら執筆してます！笑 (2021年4月7日 13時) (レス) id: 41a6911d5c (このIDを非表示/違反報告)
春風 恋(プロフ) - チヒロさん» 分かりますかっこいいですよね切島くん(最推し) (2021年4月7日 13時) (レス) id: 41a6911d5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春風 恋
| 作者ホームページ：http://urana
作成日時：2021年3月27日 13時
